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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(11)外法帖
間にしょうもないギャグを挟んでしまいましたが、やっと本命、榊さんの活躍話の続きであります。・・・とは言っても、最後に「茂保衛門様〜」書いてから3ヶ月(!!)、モロに経ってますし、おまけに「OP」の某・剣豪の長編なんぞ書いてしまったんで、感覚取り戻すのに時間かかりそうですが。
さて、今回はいよいよ榊さんが、勝ち目のない(汗)戦いに身を投じる羽目になります。こういう時なんでしょうね、人間の本質って言うものが如実に分かるのは。でわっ!
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茂保衛門様 快刀乱麻!(11)
馬を急き立て走らせてから、一体どのくらい経ったかしら。
あたしたちは何とか、目的地の神田までたどり着いたみたい。そして今まさに、木戸を閉めようとしているところに出くわす。
そう言えばついさっき、夜の四つ刻を知らせる鐘が聞こえたような気がする。まさに間一髪、だったようね。(まあ例え木戸が締め切られたところで、盗賊改絡みなら開けては貰えるんでしょうけど、色々面倒でしょ?)
あまりの狼藉に仰天しちゃってる警備所員には構わず、あたしはそのまま馬で木戸を飛び越えた。大声を張り上げながら。
「火急の用件です! 私は火附盗賊改方与力・榊茂保衛門! この木戸はしばらく開けておきなさい! そして町火消と火附盗賊改にただちに連絡を!」
高らかに、と言いたいところだけれど、この時のあたしってば馬を乗りこなしてここまで来るだけで疲労困憊。正直なところ声もところどころ掠れ、息も途切れ途切れだったことは否めない。
・・・でも誰も失笑なんてしなかった。あたしが大慌てでここまで来たことは一目瞭然だったし、何より発せられた言葉から、緊急事態だってことを察したのだろう。
血相を変えた者によって木戸が開けられ、1人ほど番所へ知らせにであろう、沫を食って駆け出して行くのを目の端に留めつつ、あたしはほとんど転げ落ちるように馬から下りた。
「だ、大丈夫ですか? 榊さん」
こちらの声は、松明を持ちながらも懸命に馬にしがみ付いていた、御厨さんのもの。
彼も、ただでさえ最低限の身だしなみしかしていない男だってのに、髪は乱れ、着物もシワだらけときている。ま、かなり馬を飛ばしましたからね、やむを得ないってところなんでしょうが
「・・・上司の、心配を、している暇が、あるんでしたら、すぐさま、行動に移りなさいな、御厨さん。例の、あ、油売りの、住居を聞き出さなければ」
「分かりました。では早速・・・」
それでも御厨さんの声は、比較的落ち着いている。これなら少しぐらいの立ち回りは期待できるかしら。
───そう、思った矢先だった。
「うわあああああっ!?」
狼狽しきった男が数十名、裏長屋の1つから転がるようにして、こちらの木戸目掛けて押し寄せて来たのは!
・・・どうやら、油売りの住居を聞き出すまでもなさそうね。おおよその見当は付いたわ。
それでも生真面目な御厨さんは、まずはそちらへ駆け付け、何があったのかを逃げ出してきた男たちに聞き出そうとしている。
「お前たち、一体何があったと言うのだ!?」
「火、火、火が・・・」
「火だと!?」
「そうですだ、お侍様! めらめらと燃える火が、あちこちから湧いて出たんでございますよお!」
「・・・それにしては、物の焼ける匂いはしないが?」
御厨さんの指摘通りここには、あたしたちにはお馴染みになってしまっている『火』独特の匂いは、まだ漂ってきていない。火事を知らせる半鐘も、鳴ってやしない。
とは言え。
「だから尚更不気味なんじゃありやせんかあ!」
「と、とにかく落ち着け。誰か、ここに住んでいると言う油売りの行商のことを知らぬか!?」
いくら『お侍様』の命令でも、彼らがそうそう落ち着けるわけがない。当然、御厨さんの質問にも答えられるはずもなくて・・・。
まったく、仮にもあたしの部下ともあろう男が、もっと効率よく用件を聞き出せないわけ?
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12月18日(水)
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