ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■茂保衛門様 快刀乱麻!(3)−2 外法帖
 一目散に走って行った与助を見ながらあたしがそう言ったら、御厨さんはどこか怪訝な目をしてこっちを見る。
「? 何よ」
「いえ・・・何も、榊さんが出る事もないと思うもので・・・」
 確かに御厨さんが言う通り、与力が調査に出る事は本来ならあまりないの。同心たちに調査を任せてあたしたちは役宅で取り調べ、って言うのが普通なのよね。
「今回は他ならない、このあたしが目撃者ですからね。他の人では分からない手がかりが、あるいは掴めるかも知れないじゃない。・・・それともあたしが同行しちゃ、何かまずい事でもあるんですか?」
「そう言うわけじゃなく・・・少しお疲れなのでは?」
 ・・・あら、顔に出ちゃったってわけ? うまく隠してたつもりだったのに、御厨さんてホント侮れないわね。
 まあ、気遣ってくれる事自体は、とっても有り難いんだけど。
「疲れてるからこそ、さっさと事件解決に乗り出したいのよ、あたしは」
「は?」
「・・・焼き魚、あれから全然食べられないのよ」

 あれから≠チていつのことか、ですって? 決まってるでしょ。岸井屋の主の、焼き立てこんがりの焼死体を見てからよっ☆
「お刺し身は高いし、御飯ばかりじゃ力が出やしないし、このままじゃあたし財政的にも体力的にも干上がっちゃうわっ。こうなったら是が非でも、自分の力で犯人捕まえて精神的安定を手にしなきゃ、って思ってるの。これっていけないことかしら? 御厨さん」
「・・・・・☆」

 闘志が変な方向に燃えてるな、とは自分でも思うけど、しょうがないわよ。
 ・・・とにもかくにも。
 御厨さんは諦めの態度として、軽く溜め息を吐きながら天井を見上げてみせたのだった。


《続》
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※ちょろっとだけ、《龍閃組》の話が出てくれてほっとしてます。もちろん出番はこれだけではありません。これからそこそこ登場する予定です。
 それと、作中で女性が火あぶりになったとしてますが、お芝居などで有名な「八百屋お七」が、後にも先にも火あぶりに処せられた唯一の女性だった、という説もあるみたいですね。まあ、この辺りはフィクションと言う事で、勘弁してくださいませ。

03月16日(土)
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