ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■忘るる事象について、いくつかの報告(2)
「だからそこで殺気立つな! ってか、賛同してねえだろうが俺は! いいから落ちつけってんだよ」

 ズルズル、と、ルキアを夜一たちから少しだけ遠ざかったところへと引っ張って行ってから、かなりの仏頂面で一護は切り出した。

「・・・あのな。コンのアレ、多分いつものあいつのやり口なの」
「は? やり口だと?」
「だから、絶妙なタイミングでこっちの悪口言って、こっちの謝る気持ちを削ぐ、って方法」

 思いもよらないことを打ち明けられ、呆気にとられるルキアに気まずい思いをしながらも、コンの弁護をする一護である。

「俺も何度か、経験あンだよ。さすがにこれだけ一緒に住んでると、ケンカしねえ方がおかしいだろ? 男同士だし。だから取っ組み合いなんか日常茶飯事だし、時々派手な口ゲンカもするんだけどな・・・たまにあんな風にかわされちまうんだ」

 ただし、コンがこのやり口を実行するのには、一定の条件がある。明らかにコンの方が悪かったり、逆に一護の方が悪かったりする時は、絶対にこんな方法はとらない。そういう場合は大抵、『悪かった』方が折れてとりあえずおしまい、だ。無論、折れる方の気分によって、膠着状態は変に長引いたりもする。
 だが。

「今回・・・俺たちの方が断然悪いはずなのにこんな態度取ったってことは、多分あいつ、俺たちに謝って欲しくないんだ、って気がする」
「何だそれは」
「理由は分からねえ。俺たちとはぐれてた時に何かあったのかも知れねえし、全然違う原因があるかも知れねえ。いや・・・どころか案外、落ち込んでる理由自体、俺たちとはまるで関係ねえ可能性もあるだろうがよ」

 第一、コンの身に起きたことが全て自分たち絡みだと思うのは、とんだ傲慢ではないだろうか。彼には彼の、彼だけの、自分たちがあずかり知らぬ世界があるはずだから。

「・・・だからアレは今、下手に見当違いのことで謝罪入れられたって困る、って意味なんじゃねえかと思う。あいつもそれが薄々分かってるから、敢えて誤魔化してんだよ」

 あいつ結構ややこしい性格してるしな、と一護が疲れたような苦笑を浮かべるのを見て、ルキアは怒りの矛先と斬魄刀を収めたのだった。・・・一護の顔を立ててとりあえず、ではあるが。


「おーう一護、やっと来やがったか。遅かったじゃねえか。さっさと現世へ帰ろうぜー」

 コンは相変わらず低いテンションのまま、夜一の『胸枕』を楽しんでいる。やはりと言うか、後頭部を胸に埋(うず)めると言うまさに枕のような扱い方で、本来の彼が好きそうな顔面を埋める『ぱふぱふ』状態ではない。
 一護に、自分の推測の正しさを確信させていると知ってか知らずか、ルキアたちにかける声は能天気を装って。

「姐さーんv 元に戻ってくれて嬉しいっスよ〜v 体の具合、大丈夫っスか?」
「・・・ああ、もう何ともない。しかしコン、貴様こそとんでもない風体になっておらぬか?」
「このくらい、一護とのケンカで慣れてますから」
「をいこら、人聞きの悪いこと言ってるんじゃねえ。いくら何でも俺は、ここまでひでえ状態にした覚えはねえぞ」
「それに、この状態なら井上さんに修繕と入浴頼む口実になるっしょ? ムフフ・・・楽しみだなあvv」
「人の話を聞けっての」
「一護・・・絶対に井上には修繕を頼むなよ。友人として彼女の身が心配だ」
「おおよ。ってか、石田でも贅沢だ。やっぱ遊子の奴に、全部頼んだ方が良さそうだな」
「げげっ☆ そ、それはちょっと勘弁してもらえねえかな〜」

 内包する気まずさは横へやり、かわされるいつも通りのやり取り。
 そんな彼らを、いわば微笑ましく見守っていた夜一だったが、おもむろにコンを抱き直した後ルキアに向き直った。
 ───ちなみに今は、ちゃんと砕蜂の羽織を身に付け、見苦しくないくらいの格好になっている。

「時に朽木。少し尋ねたいことがあるのじゃが」
「? 何でありましょうか、夜一殿」
「大したことではないのじゃが・・・お主今回の騒動中、一護のこともコンのことも忘れておったのじゃったな?」


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12月25日(木)
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