ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(3)
 だがそこで、ルキアの言葉に渋々頷きかけた俺は、急に背筋が寒くなるのを感じた。

 無意識のうちに手で押さえているのは、さっき打ち付けた体。
 打ち付けたのは、さっきまで眠り込んでいた押入れの壁。
 その押入れの奥底で───俺は、俺は、何を見つけた!?

「待てよ、ルキア・・・本当にコンのヤツ、自覚症状ねえのか?」
「・・・何?」
「ルキアはあいつに、検査とかしたのか? それともただ、問診しただけなのか?」
「いきなり何を・・・」

 眉をひそめるルキアに構わず、俺は再び押入れの中に入った。夢であってくれ、単なる心配のしすぎであってくれ、そう願いながら・・・。

 だが、もぐりこんだその奥にあった2つのアイテムは、決して夢幻(ゆめまぼろし)ではなく。
 夕日が眩しく差し込む部屋の中、俺はコンが隠していたものをルキアにも見せる。

「見ろよ、さっき気づいたんだ。2、3日前、あいつがここに持ち込んだヤツ」
「これ・・・は・・・まさか、記換神機と義魂丸!?」
「何で義魂丸が必要なんだよ? 俺はコンを、義魂丸の代わりに使ってるんだぜ? なのに今更こんなもん、何であいつが!?」

 そう、通常の状況であれば、決していらないもののはず。

 ・・・・・だが万が一、もしもの事態となっていたとすれば?
 記換神機と義魂丸、その両方が必要となるではないか!

『そっか・・・覚えてたのか』
『井上さんからも、お前からお礼言っておいてくれよ』

 必要以上にしがらみを作らないようにしていた、あの態度。

『もしあいつが、俺が・・・んだことに気づいたら、消してくださいね?』

 そしてコンがルキアに頼んだ、あの言葉。

 俺にはきちんと聞こえなかったけど、ひょっとしたらこういう意味だったのではないか。

 もしあいつが、
 俺が死んだことに気づいたら、
 消してくださいね?
 俺の記憶を、皆から───。


 ルキアの顔色の悪さは、先ほど俺が盗み聞きしていたと悟った時の比では、なかった。

「そん・・・な、馬鹿な! だってコンは、ここしばらく一護の体には入っていなかったのだろう? 改造魂魄は本能で、人間の体を死に場所に求めるのだぞ!? なのにあやつは、このところずっとあのぬいぐるみのままでいたと・・・今は一護の代わりをする気分ではないと・・・だから私は・・・」
「正確には、1回だけ俺の体を預けたことがあったんだよ。
けどあいつ、勝手に俺の代行証を使って、自分で魂魄抜き取りやがったんだ」
「・・・・・・・・!?」

 一見ワガママなコンがとった行動が、何を意味するのか───俺は最悪の結末を、想定せずにはいられない

 ルキアが改造魂魄の寿命について知り、現世を訪れるまでもない。
 手段を選ぶ暇などなく、一刻も早く俺の体から抜け出さなければならぬほど。
 そしていざと言う時のため、記換神機を傍らに置いておかねばいけないほど。

 とっくの昔にコンの身に、壊れる自覚症状が現れていたとしたら───!?


 ここで改めて俺は、コンの不在に薄ら寒いものを感じずにはいられなくなった。

 さっきまで一緒にいたルキアの話だと、今日は遊子と遊ぶ予定があると言っていたらしい。が、俺が直接遊子の部屋に駆け込んだが、遊子もあいつもいなかった。勿論他の部屋も探し回ったが、影も形もなく。

 もし本当に、あいつに自覚症状が現れているのだとしたら、一刻も早く見つけ出さないと。さもなくば、あいつはもう俺たちのところへ戻ってこない気がする。

 死を悟り、決して行方を告げず、ふらりと姿を消してしまう猫の如く───。

 必死こいてあいつの僅かな霊圧を探っていた俺に、ルキアはハッとして叫んだ。

「浦原商店だ、一護! あやつは義魂丸も記換神機も、浦原のところで手に入れたはずだ!」

 聞くが早いか、俺は代行証を使って直ちに死神化する。そして窓を飛び出し、浦原商店の方角をひた走った。

「待て一護、落ち着け!」


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12月03日(水)
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