ID:38841
ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■いつか来たる結末、されど遠い未来であれ(2)
『それなら良いのだが・・・とりあえず、早く忠告しておくに越したことはないと思ったのでな』
『しっかし姐さん、何で今更そんなことが分かったんです? 俺たちの研究成果の書類って、みんな処分されたはずでしょ?』
『先日浮竹隊長の御供で、真央霊術院へ赴いたのだ。そこでたまたまな』

 しんおうれいじゅついん? 何だそれ?

『とにかく、良いな? コン。代行とは言え死神である一護の、手を煩わせてはならぬぞ?』
『分かってますって。幸いあいつ、代行証は部屋に置きっぱなしにしてるし、いざって時は1人で抜け出せますから。ただ問題なのは・・・』
『そうだな。せめてその体の時に寿命が来れば、厄介なことにならずに済むのだが』
『そうなったら多分あいつ、2、3日は気づきませんよ。ニブチンだし。だから姐さん、その時は俺からお願いがあるんですけど』

 寿命・・・? 誰の寿命が来る、ってんだ?

 何やら物騒な話題を聞いているらしいのに、俺は大して驚いていない。
 だって、これは夢だから。

『もしあいつが、俺が・・・んだことに気づいたら、消してくださいね?』
『コン・・・』
『一護のヤツ、何だかんだで甘いから。俺がそんなことになったら、きっとイヤな思いさせちまうと思うんですよ。なーんかそう言うの、結構うざったいしー』

 ああ、やっぱりこれは夢なんだ。

 うざったいとか言ってるくせに、何だよコン。どうして妙にそんな優しい声になってる?
 どうしてそんなに・・・哀しそうな声になってる?

『せめて俺からの、最後の思いやりってヤツ?』

 コンが、あの生意気なぬいぐるみが、こんな殊勝なセリフを口にするわけ、ないじゃないか・・・。

**********

「・・・・・・あれ?」

 目が覚めたのに、周りは真っ暗だった。いつもだったら月や星の光で、うっすらと室内の様子が見えるはずなのに。

 が、すぐさま自分が押入れにいたことを思い出し、慌てて外へ出ようとした俺は、再びうっかりと体を中で打ち付けてしまった。

「イテッ!!」

 まだ頭じゃないだけマシとは言え、痛いものは痛い。患部を押さえつつ、這う這うの体(ほうほうのてい)で押入れから抜け出した、その時。

「・・・一護!?」

 聞き覚えのある声が窓際から聞こえる。視線を転じれば、いつの間にか開けられた窓の縁に、死覇装がはためいているのが見えた。

 ルキア、だ。俺に死神の力を与えてくれた恩人で、かけがえのない仲間。その彼女が、いつになく両目を見開いて、俺を見つめている。

「よ、よおルキア、久しぶりだな。またこっちで仕事か?」

 押入れで体を打ちつける、なんてベタなことをしでかした気恥ずかしさから、無難な挨拶を手始めにしたのだが、ふと眉をひそめる。

 ルキアの様子がおかしいのだ。わなわなと体を震わせ、何かを恐れているかのように見える。何があったってんだ?

「な、何で貴様が、そんなところから這い出てくるのだ!?」
「何でったって・・・押入れの中に制服のボタン、落っことしちまってよ。それを拾うために中に、入ってたんだけど」
「ずっとか? ずっとそこにいたのか? 貴様、気配を消すなどと言う芸当は、出来なかったはずではないか!」
「ええと・・・実はよく分からねえ、ってか。中で頭打ち付けて、あんまり痛かったからそのまま寝ちまってて・・・」

 それがどうかしたか、と聞きかけて、俺の中で何かが引っかかった。

 さっきのルキアの言動から察するに、こいつは俺がここにいようとは、思ってもみなかったんだろう。確かに俺は、所謂『霊圧垂れ流し体質』らしく、気配を隠すなんて真似は出来ないから、他の死神連中からは探査しやすい、って聞いてる。

 それはいい。だがルキアがどうして、俺が本当はここにいたってことで、これだけ動揺するってんだ?

 ───その時不意に、俺の頭の中に浮かび上がるのは、先ほどまで押入れの中で見ていた夢の断片。


『自覚症状はないのだな?』
『その体の時に寿命が来れば、厄介なことにならずに済む』

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12月02日(火)
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