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ちゃんちゃん☆のショート創作
by ちゃんちゃん☆
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■天才ってヤツは・・・ モン◎ーターン
一瞬。
食堂内の空気が固まった、と感じたのは、絶対僕の気のせいなんかじゃない。
はじめの衝撃が収まったんだろう。波多野君は慌てて説明を試みてる。
「あ、あの、蒲生さん? でーぶいでーじゃなくて、DVD。CDみたいのにTV番組録画するヤツですって」
「はあ? CDにどうやって録画するんじゃ? どうやってCDプレイヤーで再生するんじゃ? テレビにCDプレイヤー繋ぐんか?」
「い、いえ、そうじゃなくてですね・・・」
・・・ああ、みんなこっち注目してるよ。興味津々な顔で。見ないフリはしてるけど。
だって蒲生さんだよ?
SG2つも獲ってる蒲生さんが、だよ?
今どきDVDを知らないなんて、何の冗談だって思っちゃうじゃない。
でも、だったら蒲生さんってどうやって、レースごとの作戦立てたりするんだろう?
「こっち相席、かまわないかな?」
僕が混乱と動揺で頭を抱えてたら、また頭上から声がかけられた。
慌てて起き上がったら・・・そこにいたのは艇王・榎木さん!?
「ど、どうぞっ!」
・・・声が上ずってるの、勘付かれたかな?
波多野くんや洞口くんだと、よくSGで戦ったりしてるからそんなに気後れもしないんだろうけど、僕にとっての榎木さんって、まだまだ雲の上の存在だから。
榎木さんは苦笑らしきものをちょっとだけ浮かべ、食事のために席に着く。
と、さっきまで波多野君と漫才会話(にしか聞こえない☆)を繰り広げていた蒲生さんが、何の屈託も感じられない声で榎木さんに声をかけた。
「おお、榎木ー。ちょうどええところに来たわ」
聞いた話によると、蒲生さんって榎木さんの1期先輩で、新人時代から仲が良かったらしい。僕じゃ緊張するしかない榎木さん相手に、こうも自然体な会話ができる辺り、何だか納得気分だ。
それで榎木さんは、と言うと。
どうやら、蒲生さんが僕らと相席していたことには気づいていたみたいで、声をかけられたこと自体はそんなに驚いていなかったんだけど。
声につられて蒲生さんの方へ顔を向けた時、ちょっと怪訝そうな顔になった。
「・・・? 蒲生さん、一体波多野に何やったんですか? 随分疲れてるみたいですけど」
見れば、もはや説明に疲れ果てた、と言わんばかりの波多野くんがテーブルに突っ伏している。
気持ちは良く分かるよ。うん。
そんな僕らの気持ちを知ってか知らずか。
蒲生さんは再びこの場に、爆弾を投下してしまったのである。あっさり、しれっと。
「イヤ、何や分からんことがあっての。波多野に説明してもらっとったんじゃ。
なあ榎木、でーぶいでーって・・・何や?」
・
・
・
皆が固唾を呑んで見守る中。
榎木さんは予想通り、数秒間見事に固まった。
が、さすが艇王というべきか? 僕らよりは幾分か早く立ち直り、もう一度蒲生さんに確認する。
「DVD、ですか?」
「おお。よお分からんきに」
「・・・・・・。またですか、蒲生さん」
苦笑と諦めとがない混ざった、それはそれは複雑な笑みを浮かべながら、榎木さんはため息をついた。
その言葉に、今まで疲れ果ててたはずの誰かさんが、すかさず復活。
「あの・・・榎木さん?『また』って、どういう意味なんです?」
よしっ、波多野君ナイス!
僕らみんなが疑問に思ってることを代わりに聞くのは、君に一任したからねっv
「言葉の通りだよ、波多野」
どこか笑いをこらえたような顔で、榎木さんは波多野君に答えてくれる。
「私たちがまだルーキーの頃だったかな。やっぱり斡旋先の食堂で、こんな風に私を呼び止めて、この人が聞いてきたんだよ。『VHSって何か?』って」
その途端。
よせばいいのに僕の想像力ってば、「さっき僕らに聞いてきた表情そのまんまで、ルーキー時代の榎木さんに尋ねる蒲生さん」って言うのを、瞬時に頭の中で形成してしまったんだよね。
『なあ榎木、ぶいえいちえすって・・・何や?』
・・・ぷっ☆
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11月28日(月)
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