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ドラマ!ドラマ!ドラマ!
by もっちゃん
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■神経衰弱〜トレランス旗揚げ公演〜
そして、この芝居を観て目からうろこが落ちた。観て、というより、同行のそれちゃんが何気に歩きながら、そのあとご飯食べながら言ったこと。まず、「良かった、良かった」言ってくれたのが私としても、良かったーーと思ったし、それより、数日たって、舞い上がってたので、彼女のどの言葉に深く「すげー」と思ったのか忘れてしまったのが残念だが、とにかく、映画やライブとかも観ている彼女だからかもしれないけれど、多少持っていた芝居というジャンルのものに対する先入観というものもあっても、いざ、板に乗ってる目の前の生の芝居を観ているとき、非常に、素直に、色んなアンテナ使ってみてるってこと。芝居好きの芝居のためのアンテナだけじゃないとこからも観てるってこと。もちろん、脚本が、音楽が、キャストが、演出が、流れが、って形、役割をかえて、映画でもライブでもあるだろうし、芝居観は、芝居観で、それが気になったりするけど、気になりすぎて、「アー、私、もっと単純にコネタさがしたり、でも全体見たり、とにかくもっと、変な思い入れとか捨ててみればよかったなぁ」それは、これから観ていく芝居もそうだなぁ。大収穫。
そして、ホテルの部屋でパンフレットを読む。トレランスとは「寛大、寛容、包容力」という意味らしい。それについて役者のインタビューが載っている。それぞれの個性がうきぼりにされていて楽しく読んだ。でも、何より衝撃的だったのは、チラシには『話しすぎる女と話にならない男』と書かれているが、本当に言いたかったことのひとつは、『夜に太陽が見えないから、太陽は存在しないとか、昼に月が見えないから月が存在しないと、言っているのと同じこと・・・』ってことだったんだねー。
上杉祥三という男の家族との思い、それは自分が今も影響を受けている上杉が乳幼児の時に死んでしまった姉と、父のことが主であるが、正直につづられていた。ここまでさらけていいの?っていうくらいに。この一緒に遊ぶこともなかった姉が青年期の上杉に知らない間に影響を与え、姉の影響について自覚しだしたころから、呪縛のようなものが消え、どちらかというと、この台本自体、彼女後押しして書かせてくれたものかもしれないと、その見えないけれど・・・確かに存在しているものに畏怖の念を抱いている。そして、医者を二度信じ、医者に二度裏切られたような亡くなった父親の死すら、それは、あの世での姉(娘)との邂逅のためかもしれないとすら、思っているという。そして、この作品はその2人に捧げたいと、しめくられていた。
私は胸が締め付けられた。元気にパワフルに脳天気そうに生きているからと、淡々と日常を送っているからといって人の人生はそのまま見えるままではないとわかっている。もしかしたら、すごい十字架を背負っているのかもしれないし、どうしても持ち続けなければいけない思いを抱いているかもしれない。失敗とか、挫折とか、そういう苦しみや試練とはまた違う、何か宿命的な・・・。逃れるというよりは、そしてそれを恨むというよりは、共生していくという決意でもって臨まなければ、アイデンティティーが崩壊したり、生かされていることすらが償いのような・・・。
あぁ、この芝居はきっともっと深遠で、でもスゴク実は重さは色々でも、身近に誰もがあるかもしれないことを取り扱っていたのかもしれない。もう一度、この公演を別の日に観れるのなら観たいとも思ったが、何年か先、トレランスとして幾つかの公演を経験した後の上杉祥三が、このままか、あるいは改訂して演出も、キャストもそのときのベストで、再演して欲しい、それにまた私は立ち会いたい、そんな私にとっても、持ちつづけたい作品の一つに、巡り会ったと思った。
06月02日(日)
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