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へそおもい
by はたさとみ
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■奄美大島の旅5(わすれないうちにいそいで書きなぐる)

そのことばが
胸にじんとひびく。



おふたりは
大阪の職場で出会い、
9年前にここに移住してくるまで
共働き生活を
していたそうだ。


おとうさんが
脳梗塞で2回倒れ、

医者に
次倒れたら命の保障はない
といわれ、

それで
定年前に退職し
残りの人生を
大好きな海のそばで
住むことに決めたらしい。


お父さんは3月末に退職し
先にこちらにきて
こつこつとリフォーム。


お母さんは
まだ仕事があったので
3ヵ月後の7月に
追いかけて
やってきたのだという。


朝起きたら
まず
たりで散歩。

海沿いを
ずっと向こうまで
結構な距離を
あるく。


朝ごはんを食べて

晴れたら
船をだして魚を取るか

それとも
畑仕事をするか。


お昼をたべたら
「午後はなんもせん」。

そんな暮らしを
しているという。



飛行機にいるときから
まるで恋愛中の
カップルみたいに
なかがいいなあ…と
おもってはいたが


いろいろな
おふたりの歴史があって
いまこの
ほかほかご夫婦が
あるのだなあ…と
しみじみ
おもう。



お互いの
かけがえのなさ

いまここに
一緒にいることの
たいせつさ
しあわせさを

一瞬一瞬
あじわいながら
生きていることが

おふたりから
伝わってくる。



お父さんになついている
飼い猫歴のある野良猫。



加計呂麻の
いろいろな話を
きく。



ご近所のおじさんが
畑仕事をしている横を
お散歩でとおりかかって
挨拶をしたら

「かぼちゃ
 もうすぐ
 うまれるよー」


という言い方を
したらしい。

野菜の実がなること
うまれるっていうんだーって
びっくりしたそうな。

「まるで
 子どもを育てるみたいにね
 こっちの人は
 植物をそだててるんよ」



お母さんが
緑茶をいれてくれる。

そのお茶碗が
あたたかみがあって
とってもすてきだった。


「すてきなお茶碗ですねー」

「わたしが作ったのよー」

とお母さん。

陶芸をやっているのだという。



すぐ横の棚にならんでいる
どっしりとした壷や花瓶

みんなおかあさんが
つくったと。


「すてきー」
「あったかいカタチー」

わたしとまやさんが
ながめていると


「いま飲んでるやつ、あげる。
 もってかえりなさいよ。
 あとで洗ってあげるから」


「え!いいんですか!」
「うれしいー」

色めきたつ
わたしたち。


まやさんの
宿での珈琲カップは
黒糖焼酎のカップだったが
これからは
お母さんのカップに
バージョンアップだ。


時計をみると
もう5時すぎ。


そろそろ
お暇することに。


部屋の壁
ところどころに
筆で描かれた
うたの短冊が
かかっている。


よくみると
お母さんの名前。


「うた詠むんですか」

「そうねー」


島での
暮らし

集落の人たちの
日常の風景を
描いた

あたたかな
そぼくなうたたち。


その中に
お父さんのことを
詠んだうたがあった。


生死をさまよった
おとうさんが
元気にそこにいて
畑をたがやしている

その姿をみている
おかあさんの心が

伝わって
くるような
うた。


さっきから
じわじわと
おされていた

わたしの
涙スイッチが
ついにオンになり

涙が

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04月05日(金)
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