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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■GQ取材記A
台北アメリカンスクール

外国人から見ると、高級住宅の集まる天母地区は、
「あまり台湾らしくない場所」だ。
台湾らしさの濃厚な士林の美食街で名高いのだけれども。

日本人学校の向かいに、中山北路を隔てて、有名な台北アメリカンスクールがある。
現地では「英語を習うのに最適な場所」という伝説のあるところでもある。
貴族の高校に共通しているようなエリート的たたずまいがあり、
校門は仰ぎ見なければならないほど高い
――外国籍でなければならないという厳しい制限のほか、
英語に問題がなく、両親に経済力があることが必要なのだ。

台湾の裕福な家庭は、ヨーロッパの小国で土地を買うことで、
子どものために外国のパスポートを手に入れる。
日本人は子どもが英語の難関を突破できないのではないかと心配し、
回り道で目的を遂げさせようとする――
まず、「レベルが少し下の」ミッションスクールで英語を猛勉強させ、
それから入学試験を受けさせるのだ。
もし、不幸にして両親に経済力がなければ、
たとえ国籍に問題がなく、英語が上手でも、
途中退学もありうるという心の準備をしておかなければならない。

道路を1本隔てただけの日本人学校で中学3年になった金城武は、
将来の計画などほとんど考えていなかった。
小学校6年の卒業文集で、彼は「大きくなったら」という題の短い作文に、
「スーパーマンか警察官」になる、と書いている。

「あの頃、日本人学校とアメリカンスクールは
ずっと何かしらの友好関係があったようで、
日本人学校の同級生が何人も一緒に入学試験を受けました。
英語もあわててつめこみました。
突然高校を受けることになり、突然英語の補習クラスに入ったんです。
でもぼくは間違ったことばかり覚えたみたい」と、金城武はおかしそうに笑う。
彼は私の「英語はどこで勉強したの」という質問に驚きを隠さず、
あたかも「人間はなぜご飯を食べるの」と聞かれたかのようだった。

不意に彼は楽しそうになり、目がきらきらと輝いた。
ほこりだらけの古い家で、子どものとき大事にしていたおもちゃを見つけたかのようだ。
「今でも忘れられないんだけど、入学試験のとき、対話、
つまりConversationの試験があったんですよ。
ぼくはうまく答えられていると思ってました。全部聞き取れてたので。
でもわからないことが出てきた。
今、1億米ドル持っていたら何をしますか、と聞かれたんです。

その数の単位を、そのとき初めて聞いたんです。
つまり持ってるのが1億ドルということ。
ぼくはとっさに、1億? きっとそれは数百元とか数千元とかのお金で、
それで何をするかと聞いているのだと考えました。
それで、おもちゃと本となんやかやを買うと言い、うまく答えられたと思いました。
終わって出てくると、口頭試験を受けたほかのクラスメートが
その問題について話していたので、何と答えたか聞いてみると、
お父さんに家を買ってあげると答えたと言う。
足りるわけないじゃないか?! とぼくが言うと、
友達は、買えるに決まってるよ、1億ってこれこれの額だぜ、と言うんです。
わ、終わった、と思いましたね」
金城武は大笑いして両腕を広げ、お手上げだという仕草をした――
「そいつはぼくより上のレベルのクラスに入ったんですよ……」

インタビューの間、周りに集まってきて聞いていた者たちが一斉に笑い転げた。
彼は、まさにあの、「ラベンダー」の、ぼうっとした天使のようだった
――善良で欲を知らず、単純でこだわらない。
彼は自分の滑稽な話をするのを好み、
役者特有の即興の表現力で、周りの者たちを喜ばせる。

アメリカンスクールのアメリカ式教育は、金城武に人生のもう1つの門を開き、
世界は明るく生き生きと変化した――
「もちろんアメリカンスクールの方が好きですね。
わっ、自由だ、と感じました。
それもうまい具合に、あの高校生という年齢の頃にあたっていて」

アメリカンスクールで、彼はバレーボールをし、友達とつきあった――

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02月20日(土)
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