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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■雑誌記事(智族GQ7月号@)
彼は眉をひそめ、「前より年をとった」と、声をあげて笑った。
実は、彼の成熟感は、蓄え始めたひげによるところが大きい――
ふと思いつき、面白がってやった結果なのである。
彼に備わる子どもっぽさは決して消えることなく、
自由奔放に近い彼の表現の仕方がそれを傍証する。
デビュー以来、ずっと傍らに付き添うマネジャー、エヴァは、
こんなに知った間柄でも、ときに、彼の話の飛躍のスピードと転換の多さについていけず、
ぽかんとしてしまい、やっと彼がまた彼独特の冗談を言っているのに気づくことがある、
とため息をつく。
人生の新しい段階ごとに異なる言語を話してきた彼は、
今でも、「どの言葉も話せるが、どの言葉も完璧ではない」状態にある。
色々混じった言葉の使い方と語彙は、逆に彼に一種独特の視点を与えることになった。

彼はよく、変わった比喩を口にする。
例えば、「武侠」で徐百九に四川方言をしゃべらせたことを説明して、
「そうすることで、やっと人物の色を見つけることができた」からだと言う。
初めは標準的普通話で台詞を言っていたのだが、どうしても役との間に壁を感じてならなかった。
「中国はこんなに大きいから、省ごとにその特色がある。
どうして標準のじゃなくちゃいけないのか?」
彼はその場で、周りのスタッフに方言を話してもらい、それについて覚えた。
「自分では四川方言だと思って、めちゃくちゃにしゃべってた」
だが、監督も彼も、これでよい、と感じた。

頭だけで考えてやるよりも、金城武は現場で創り上げていく方が好きだ。
「家で台詞を考えて覚えていっても、現場に行ったら、わあ、セットはこんなだったのか! 
雰囲気が全然違う、ということになる」
ウォン・カーウァイが彼を「恋する惑星」に自ら指名して起用したとき、
彼はまだ1本しか映画を経験していなかった。
周りが驚き羨むなか、ウォン・カーウァイ……一体だれなの? と彼は困惑した。
まさにそのウォン・カーウァイの空間の中で、彼は、今、そのときを楽しむことを学んだのだ。
あるいは、まさにウォン・カーウァイの予測不能性が、
彼に俳優の受動性をも理解させたのかもしれない。

「作品は、往々にして1つのレベルしか描き出せない。
ときには、何度も試したのに、最後には全部カットされることもあるし、
また全然何にもしなかったのに、すごくいい感じに仕上がっていることもある。
芸術において、100パーセント自分の考え方を表現するのは、非常に難しいと思います」

彼はいつかは監督になりたいと思っていた。
あまり具体的な計画ではなく、理由は1つ。
ある年齢になったら、あることをしなくてはならない、ということだ

「赤壁」出演後、彼はこの夢をすっぱりと断ち切った。
「ジョン・ウー監督を見て、わあ、監督って本当に大変だ……どうやってやってるんだろうと」
チャン・イーモウが「LOVERS」に出演を依頼してきたとき、彼は身に余る光栄に驚き、
それどころか、人違いではないかとさえ考えた。
ピーター・チャンのオファーのときも、また同じような思いだった。

彼は自分が俳優養成所出身でないことを自覚し、絶えず生徒の心でいる。
一緒に仕事をする監督は、ますます大物になり、
映画のテーマもますます壮大で華々しくなってきた。
時代の大きな流れの勢いはさらに激しく、
彼も両腕を開いて、増す不確実性を抱きとめようとする。

「ピーター・チャンの恋愛映画が好きです、『如果・愛(ウィンター・ソング)』みたいな。
でも、彼の選ぶ題材はどんどん大きいものになり、そして今の『武侠』になった。
映画監督なら誰でも一度は武侠映画を撮りたい。一緒に一度は撮らなくちゃならない。
それは挑戦です。結果が良くても悪くても、一種の突破なんです。
ピーターと一緒に仕事をして、一緒に模索して、
彼がどんなやり方で、破片を集めて1つにするのかを見ると、
学べることはたくさんあります。
でも、どのくらい吸収できるか、それは自分自身にかかっている。

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08月13日(土)
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