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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■中越沖地震の記録 (19)
24日には6号機の原子炉の真上にある天井クレーンの損傷がわかった。原子炉を納めた圧力容器のふたの開閉や、核燃料の搬入に使われる重要装置だ。
クレーン本体が落下したわけではないが、原子炉建屋内は原発施設の中でもっとも揺れに強く設計されているはずの場所である。そこで損傷が起きたことは見逃せない。万が一、クレーンが落下していたら、大事故につながった恐れもある。
どういう揺れによってクレーンの破損が起きたのか、耐震設計に問題がなかったかなど、詳しい調査が欠かせない。
こうした重要機器の破損が、地震発生から1週間以上たたないと明らかにならないことにも、住民は不安を抱くはずだ。これまで、電力会社のトラブル隠しが問題になってきただけに、揺れの詳細なデータなど、わかっている情報は迅速に公開すべきだ。
それにしても、東電の地震に対する備えの甘さには驚く。変圧器で起きた火災を自力で消火する体制が整っていなかっただけではない。柏崎刈羽原発に備えられた地震計97台のうち63台のデータを消失した。データ容量が小さく、本震のデータの上に余震のデータが上書きされてしまったというからおそまつだ。
これでは、地震の影響の解析にさしつかえる。同様のデータ消失は3月に起きた能登半島地震の際にも、北陸電力志賀原発で起きている。なぜ、その教訓に学んで直ちに対応しなかったのか。油断があるとしか思えない。
さらに、根本的な問題として、地震を起こす活断層の過小評価がある。東電は原発建設前の調査で今回の地震を起こしたとみられる断層の一部を見つけていながら、耐震評価の対象からはずしていた。国は東電のこの判断を認め、原発の建設を許可していた。
東電と国の両方に、地震に対する評価の甘さがあった。これでは他の原発の信頼性も揺らぐ。国は昨年、原発の耐震指針を改正しているが、過小評価が見逃されるようなシステムも見直さなければならない。
消火体制の不備にしても、地震計の不備にしても、柏崎刈羽原発だけの問題ではない。活断層の過小評価も同様であり、全国の原発の点検を急いでほしい。
国民の間には、地震のリスクの高い場所に原発を建設すること自体への疑問もある。中部電力浜岡原発のように、想定される東海地震の震源域の真上に造られた原発もあり、不安に思うのは当然だ。
原発に「絶対安全」はなく、新しい耐震指針も想定外の地震による重大事故の可能性を認めている。そうしたリスクがどの程度なら許容できるかを最終的に決めるのは国民だ。そのためにも、電力会社や国は原発の耐震性について徹底した情報公開を行うべきだ。
毎日新聞 2007年7月26日 東京朝刊
07月29日(日)
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