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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 北京五輪が閉幕
 ソフトボールでは過去3大会連続覇者の米国を抑えて日本チームが金をもぎとった。エース上野由岐子選手の3試合連投413球は特筆に値する。北京が五輪公式競技としてのソフトボールの最後の大会となったが、復活への希望をつなぐ熱投だった。
 多くの感動的な場面を生んだ北京五輪は、競技運営の面では「成功」といえよう。
 しかし、「人間の尊厳保持に重きをおく、平和な社会を推進する」との理想をうたうオリンピック憲章に照らしてみるとき、北京五輪に「合格」の評価を与えるには、いくつかの留保をつけざるをえない。
 まず、五輪開催国が最優先すべきである報道・言論の自由と人権が完全に保障されていたかどうか。これは疑わしい。
 開会式の前後に新疆ウイグル自治区で少数民族の過激派による武装警察などへの襲撃やテロがあり、多数が死傷した。現地に飛び事件の取材にあたった産経新聞記者を含む複数の邦人記者が短時間とはいえ拘束された事実は、民主主義社会における常識からすれば、異常だ。これについて、中国当局から納得できる回答はまだ得られていない。
 競技施設が集中する北京の五輪公園周辺では数回にわたり、欧米の人権活動家らが「チベットに自由を」などと書いた横断幕を広げ、そのたびに警官に排除された。中国当局が五輪取材の報道陣に対して公言したインターネット規制の全面解除は、五輪終盤になっても実現していない。
 言論の自由や人権については、北京五輪組織委員会の定例会見で毎回のように欧米メディアが質問したが、組織委側からは「デモは問題解決のためであって、デモのためのデモであってはならない」など紋切り型の回答が目立った。これでは、国際協調を打ち出した北京五輪のスローガン「一つの世界 一つの夢」が泣く。
 ≪効果の定着を期待する≫
 胡錦濤政権は北京五輪の開催を「中華民族百年の夢」とした。豪華絢爛(けんらん)たる開会式に続きメダル獲得競争を制することで一党独裁による改革・開放路線の正しさを内外に誇示しようとした。
 しかし、国際社会の評価を異常に気にするあまり、五輪施設周辺だけで軍や武装警察を含めて11万人もの治安要員を駆り出した。過剰な警備網は異様である。
 多くの外国人には奇異に見えたことはまだある。開会式の舞台に登場した少女が歌った革命歌曲は吹き替えだった。「中国の56民族を代表して」と紹介され、色とりどりの民族衣装姿で行進した子供たちもじつは大半が漢民族だった。五輪組織委はすべてが「最高のパフォーマンスを提供するため」の演出だという。
 五輪にあたり中国当局は対外イメージの悪い中国人のマナー改善教育に躍起だった。テレビの人気番組が「正しい応援のしかた」という特番を組んだほどだ。
 実際には日本の相手チームばかりを大声で応援する試合もあり、当局の思惑通りにはならなかったが、市内の地下鉄では年配の外国人に積極的に席を譲る学生の姿も見られた。五輪効果の定着に期待したい。
 政治、経済の両面で今後も影響力を強めるであろう中国(人)がどう変わっていくか。「百年の夢」の後を生きる五輪後世代が、中国の命運を握っている。

08月25日(月)
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