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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■世界不況 非正規社員8万5000人の解雇
06年に偽装請負が社会問題になり、多くの企業は請負を派遣に切り替えた。派遣期間は原則1年、特別な手続きを経ても上限は3年で、製造業派遣の多くが09年で違法な状態となる。この「09年問題」を前に、製造業の「派遣切り」は直接雇用を避けたい企業が不況を口実に進めているとの見方もできる。
期間従業員の契約期間中の解雇も相次いでいる。期間従業員も派遣社員も、最低でも残りの契約期間中の賃金が支払われるべきだ。多くの人々が職を失っている今、緊急的な対策として、まず生活の基本となる住居の確保が必要だ。だが転居は労働者の負担が大きい。継続して住まう保障があってこそ、安心や明日に向かうエネルギーが生まれる。
本来、派遣業者はハローワークと並んで働き手と仕事をマッチングし、生活の安定に寄与する役割を果たすからこそ、その存在が認められたはず。それが失業させたうえに住まいから追い出してしまうようでは本末転倒だ。失業給付も登録型派遣労働者にとって1カ月の待機期間が設けられるのは生き死ににかかわる問題で、迅速な受給体制が求められる。
中長期的には規制緩和政策の見直しが不可欠だ。市場原理に任せると、人間の労働は一般の商品より買いたたかれ、安い賃金で使い捨てにされる。市場原理にワンクッションおいてだれもが安心して働ける仕事を保障するためのルールやセーフティーネットの構築が課題だ。
派遣先が決まった時だけ働く「登録型派遣」を認めてしまった労働者派遣法には基本設計上の欠陥があった。常用雇用を原則とすべきだ。また「ワークシェアリング」が本格的に目指されるべきだ。そのためにも、政治がリーダーシップをとって新しい時代にふさわしいルールを作ること。今は厳しくても頑張ろうという社会に、きっとなるはずだ。
◇米国の負の側面露呈−−エコノミスト・門倉貴史さん(37)
今回の不況は、日本だけにとどまらない世界同時のものだ。90年代初頭のバブル崩壊や、その10年ほど後のIT(情報技術)バブル崩壊の状況とは明らかに異なる。景気が悪くなると、しばらくして雇用が悪化するのが従来のパターンだったが、今回は景気と雇用の悪化がほぼ同時に進んでいる。
日本は長年、終身雇用・年功序列を守ってきた。高い経済成長率とピラミッド型の人口構造が崩れてきたこともあり、近年はそうした制度を見直す企業が目立ち、雇用調整をしやすい構造に変化した。今は企業で働く人たちの3人に1人が非正社員という状況だ。これが、景気悪化による急速な人減らしを可能にしている。
今後は消費が減るため、小売業などにリストラの波が及ぶ可能性がある。影響はサービス業にも広がり、レジャー消費を控える志向が強まるだろう。来春からは、非正規社員だけでなく正社員の雇用調整が本格化する可能性すらあるだろう。
こんな状況にもかかわらず、日本の政局は依然不安定で、有効な雇用対策を打ち出せずにいる。現在までに打ち出されている対策は、比較的年代の若い非正社員向けのものだ。中高年の失業者向けの対策としては不十分と言わざるを得ない。
もし本気で雇用を安定させるつもりなら、政府が急激な円高を阻止するとか、派遣労働の規制を強めるような形を取るべきだ。定額給付金では、景気の浮揚効果は期待できない。将来の消費税増税を約束している以上、必ずしも追加的な消費には回らないだろう。
2010年春卒業の大学生の就職戦線も厳しい。新卒採用は相当絞り込まれ、10年ほど前の氷河期に近くなるだろう。業績がいい企業が、ずっと好業績を維持するとは限らない。かなり長い目でどの企業が伸びるか見極める必要がある。転職すればキャリアアップできると言われるが、統計を見れば実態はダウンしている。今は控えた方が無難だろう。
結局、日本は米国に追従して雇用の規制を緩和してきた。年俸制を導入したりして米国の体質に近づいた。今回の不況で米国的体質の負の側面が明らかになったと思う。伝統的な日本の雇用慣行が世界的に見直される契機になるかもしれない。
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この特集は、木戸哲、工藤哲、町田徳丈、山本太一が担当しました。
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◇主な企業の非正規社員削減数
トヨタ自動車 6000
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12月28日(日)
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