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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■サブプライム住宅ローン損失額1500億ドル (約17兆円)
 計算式は、ローンの破綻など、ありそうなリスクをモデル化して数式化したものだ。各金融機関が、自社に都合の良い、過度に楽観的なモデルや係数を考え、それをもとに推定価格を算出してきた可能性は十分にある。この問題は、ローン破綻が少なかった以前は表面化しなかったが、破綻が増えて債券の価値が下がっていると皆が思い始めた今夏から、疑心暗鬼が噴出した。
 ありそうなリスクをモデル化して計算する手法は、信用格付け機関の格付けでも採られている。今夏以降、投資家の多くは「サブプライム債券の価格計算式は楽観的すぎた」「債券の実際の価格は、もっと低いはずだ」と懸念するようになった。
 もともと確定した価格がほとんど存在しない中で、計算式が楽観的すぎるかどうか問答しても、確たる結論は出ない。金融機関の方で計算式を見直しても、それが正しいものだということを投資家に納得させられるとは限らない。その一方で、現実の世界でのローン破綻者は増え、サブプライム債券の価値が下がっていることは、誰にも感じられるようになってきた。価格形成メカニズムそのものが崩壊し、サブプライム債券は下落の方向に拍車がかかっている。
▼「レベル3」の問題
 そんな中で、大手金融機関のいくつかは最近、投資家の信用を取り戻すため、サブプライム債券の推定価格算定方法を、従来よりは比較的確実なやり方に切り替えた。その一つは、サブプライム債券の先物指標であるABX指数(資産担保債券先物指数。信用デリバティブ指数)を使うものである(ABX指数の種類は、主要な資産担保債券の数だけある)。(関連記事)
 この指数は、市場における各種のサブプライム債券に対する需給状態を数値にしたものだが、今夏の債券危機以来、市場ではサブプライム債券を欲しい人がほとんどおらず、指数は非常に低い市場最安値の水準となっている。最優良のAAAの格付けの債券でも、価格は発行時の10分の1にまで下がっている。(関連記事)
 多くの金融機関は、この指数があまりに低水準なので、自社のサブプライム債券の推定価格の計算式に入れていない。しかし、シティグループやメリルリンチなど大手金融機関のいくつかは、この非常に低い水準の数字を使って自社のサブプライム債券を評価し直す必要があり、巨額の損失を計上した。
 アメリカの金融機関が、巨額の損失を出してまで、サブプライム債券の価格計算式を見直さねばならないのは理由がある。11月15日から、アメリカでは金融機関の会計基準が一部改められ、独自の計算式を使って推定価格を算出している資産の残高を「レベル3資産」として、定期的に発表しなければならなくなる(「レベル1資産」は、価格が市場で確定できる資産。「レベル2資産」は、独自計算式の推定価格と、確定した価格が混在している資産)。レベル3の資産が多いほど、その金融機関の資産評価は当てにならないとみなされる。サブプライム債券は、ABX指数を使って推定価格を計算すれば、レベル2に組み入れることができる。(関連記事)
 この「レベル3資産」の問題と、信用格付け機関によるサブプライム債券の格下げが重なって、10月以降、アメリカのいくつもの金融機関が、サブプライム債券の損失計上を発表することになった。(関連記事)
▼損失総額は1兆ドル?
 サブプライムの住宅ローンに関しては、今後さらにローン返済不能の人が増えることが確実視されている。信用格付け機関による各種のサブプライム債券の格下げが続くことは、ほぼ間違いない。米金融界では、値が下がる前の今のうちにサブプライム債券を投げ売りする投資家や、自社の関係会社が発行したサブプライム債券を関係会社ごと清算して損切りする金融機関が多くなっている。投げ売りは、さらなる価格の下落を誘発している。(関連記事その1、その2)
 アメリカでのサブプライム債券の発行残高は1兆3000億ドルで、そのうち16%(約2000億ドル)が、10月の段階で90日以上のローン返済滞納になっている。今後は、この比率がさらに増えそうだ。(関連記事)

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11月18日(日)
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