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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■帰りなん、いざふるさとへ/映画『地球の危機』
こないだから父と相談していたことなのだが、今度の正月、家族三人で台湾に旅行しないかという話がまとまりかけていた。台湾は母の故郷である。
最近、父から聞いた話なのだが、母は生前、台湾人のお客さんを案内人に、私たちと台湾旅行を計画していたそうなのである。
まあ「台湾に行こう」という話はことあるごとにしょっちゅう出ていたので(たいていはスケジュールが合わずに頓挫する)、そういうこともあったんだろうなあと思いはするが、最近になって父が熱心に話を進め始めたのは、寄る年波で今決行しないと、そろそろ体が動かなくなるんじゃないかという不安が生じ始めているからだろう。
そういうわけで、先日から頻繁に「パスポートを取れ」とせっつかれていた。全くせっかちなジイサンだと少しばかり閉口していたのだが、今日、いきなり電話がかかってきて、何だか消沈した声で「もう取らんでいいぞ」といきなり正反対のことを言い出した。
「どうしたん?」
こないだまであれだけ熱心だったのだから、私が疑問を抱いて思わずそう口にしたのも当然のことだと思っていただきたい。それに対する父の答えはこうである。
「正月は運賃が高い」
何か脱力しちゃったけど、それなら時期をずらせばいいだけのこっちゃないのかな。二月、三月なら安くなるだろうに。
もののついでのように「メシまだならどこかで食べんや?」と誘われる。何だか父も元気がないようなので、誘いに乗ってダイヤモンドシティの居酒屋で焼き鳥など。
しげと私、二人揃って『シベ超』のTシャツを着て行ったので、「何やそれ」と笑われる。『シベ超5』の映画を見に行って水野晴郎さんからサインを貰ったことや、「万里の長城ジェットコースター」の話をすると、またまた笑われてしまう。別に笑わなくてもいいと思うが。
「なんでそんな映画作るんかなあ」
「まあ、ちょっとヘンなひとだからね」
「お前、水野さんと何か話ばしたとや」
「本人を前に『ヘンな映画でした』なんて言えんよ。『もっと映画作ってください』って言ったよ」
本当はもうかなりなお年であるし、ちょっとボケちゃってるところもあると思うのだが、それを言い出すと父もたいして年は違わないので気を悪くするかもなあと思って控えた。
そのあと、父もダイヤモンドシティに来るのは久しぶりだと言うので、しばらく中を見て歩く。「新しい靴がほしい」と言うので、靴屋を覗いているとき、尿意を催した。
「三分で戻ってくるからちょっと待ってて」と言って、父も「おう」と返事をしてくれたので、安心して戻ってきてみると、件の靴屋には父としげの影も形もない。
慌てて携帯で連絡を取ると、「ジャスコにいるよ」。
せっかちが二人揃っていると、三分も待っていてくれないのである。
父の靴を買って、「フタバ図書」で映画『リンダリンダリンダ』のサントラCDを買って帰る。
父をマンションまで送った別れ際に、「セブンイレブン」でシールを集めて手に入れた「スヌーピーの絵皿」&「スープ皿」を渡す。
父のマンションの前にもセブンイレブンはあるので、このキャンペーンのことは知っていて、「よく集めたなあ」と感心していたが、しげが自分では全然料理を作らずにコンビニ弁当ばかり食っているので、よく集めたどころかウチには絵皿、スープ皿それぞれ六枚ずつあることはさすがに言えなかったのである。
こんなんでしげがダイエットできるわきゃないんだよな。
しげ、帰りの車の中で、「今日の父ちゃんどうしちゃったのかな」と、元気のない父を随分心配する。
「意地っ張りなとこがなくなってきたなあ。けどそれはオレたちにであって、姉ちゃんに対してはまだかなり頑固だと思うよ」
今日も、今の店を潰して事務所に貸そうかとか言っているのである。
姉の仕事ぶりにも不満があるようで、しきりと「いい加減な仕事ばかりしようけんなあ」とため息をついているのだが、父の目から見ればどんな仕事だって手抜きに見えるだろう。姉が「お客さんに声をかけられても挨拶もしない」と言っているのはどこまで本当なのか。
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08月30日(火)
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