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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■トラノアナ潜入記/舞台『弟の戦争 GULF(ガルフ)』
朝からしげは風邪気味、私も下痢気味で二人揃ってダウンである。
しげは「子ども文化コミュニティー」の裏方アルバイトをする予定だったのだが、急遽断りの電話を入れて休んだ。
そのまま休んでいたかったのだが、舞台のチケットを買っているのでそうもいかない。
鴉丸嬢を迎えに行って、天神に向かう。
もともと今日の芝居は細川嬢を誘っていたのだが、都合が悪くなったので、チケットを鴉丸嬢に譲ったのだ。最初は鴉丸嬢、「お金が払えないから、ほかの人に譲っていいよ」と断ったらしい。そうしたら細川嬢、「お金要らないから黙って受け取れ!」と怒ったのだそうな。
鴉丸嬢は「怒られちゃったあ」と笑っていたが、これは細川嬢の「いいお芝居はちゃんと見て、自分のマンガの参考にしなさい」という気持ちの表れだろう。こういう衷心は遠慮せずにちゃんと受け止めるもんだよ、鴉丸さん(受け止めてないわけではないだろうが)。
芝居が始まるまで、少し時間があったので、鴉丸嬢が「まだ行ったことがない」という「とらのあな」を覗くことにする。知らない人はいないと思うが、ここは闇のプロレスラーの養成所である。うそ。
鴉丸嬢のような、アチラ方面に濃い方が「とらのあな」に足を踏み入れたことがないというのはちょっとフシギではあったのだが、つい最近まで、天神に出店があることを知らなかったのだそうな。ネット販売ではもう完売してしまっている同人誌を探したいというので、こちらも付きあうことにする。
実は私も何度かしげに「入ってみないか?」と誘っていたのだが、何しろ表が実にいかがわしいから、怖くて入ろうとしなかったのである。
「だって外から中が見えないんだもん」
「あれは、中にいる人を安心させるために見えなくしてるの!」
鴉丸嬢にそう説得されて、ようやくしげも禁断の地に足を踏み入れることになったのであった。
まあ、入ってみれば普通のエロな同人誌ショップである(笑)。
BLコーナーにいかにもな腐女子がタムロしているほかは、中にいるのは見るからに電車男ファッションなオタクの群れである。ところが鴉丸嬢はエロなら何でもオールマイティーだから、密集している電車男たちの間にもスイスイ平気で入っていくのである。
そうなると、電車男たちにとっては、自分の妄想の世界に浸っている最中に、いきなりナマのエルメスが出現したようなもので、ヒビッて引くこと引くこと。うーん、やっぱり修行の足りないやつらが多いんだなあ。鴉丸嬢、目的のブツを発見したようで、欣喜雀躍。早速、会員カードも作っていた。
しげが「あんたもこういうの買うの?」と聞いてきたので、「お前と会う前は結構買ってたよ。あさりよしとおさんのとか、毛羽毛現さんのとか、プロの人のだけだけど」と答える。しげはなんだかフクザツな表情をしているが、つまりは私がここにいる電車男君たちと同類であることに対して、違和感を感じているのであろう。ったって、私は紛うことなきオタクですがな。
探し回ってみると、今は亡き(死んでないけど)安永航一郎さんの「沖縄体液軍人会」の同人誌が2冊あったので、両方とも購入する。さすが地元だ、揃いがイイわ。
安永さんは出版社とトラブル起こしまくって、『超感覚ANALマン』も『火星人刑事』も続きが出ない状況になっているので、新作はもう同人誌でしか読めない。度胸のある出版者が安永さんを引き取ってくれると嬉しいんだけどなあ。太田出版あたりがドンと一発やってくれないもんかね。
安永本が入手できたおかげで、しげはウキウキである。ついさっきまで「入りきらん(=入れない)」と言っていたのが、「また今度来よう」に変わってしまった。また鴉丸嬢と予定が合えば出向くことになるだろう。
福岡市民会館で、劇団うりんこによる舞台『弟の戦争 GULF(ガルフ)』。
原作はロバート・ウェストールの児童文学、脚本・演出は鐘下辰男氏。
いやもう、何というか感無量、押し付けがましく説教臭い「反戦」作品ばかり作っている映画人、演劇人は、鐘下さんの爪の垢でも煎じて飲めと言いたくなるくらいの傑作だった。
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08月25日(木)
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