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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■夢の中の人/『ムーミンのふたつの顔』(冨原眞弓)
 福岡市文学館(赤煉瓦文化館)に、会場の予約に出向く。
 こないだ聞いたときには、受付を設置することはできないという話だったのだが、二階を全て借り切るのなら、廊下に受付を出してもよいとのこと。何分、会場が普通の劇場ではなくて「文化財」であるから、縛りはいろいろとあるのだが、それが少し緩和された感じで、少しホッとする。
 まだまだ公演を打つためには乗り越えなきゃなせない壁があれやこれやとあるのだが(特に衣装)、私がやらなきゃならないのは脚本を読んだ役者のみなさんが「これなら演じてみたいな」と思えるものを書くことである。今回は殆どが劇団外部の役者さんの客演ということになるので、プレッシャーも相当なのだな。
 私にプレッシャーなんてあるのかと驚かれる方もいらっしゃるかもしれないが、私にだって赤い血は流れているのであるよ(笑)。


 今朝方、夢を見たのだが、夢の中で私はしげとパンフレットの打ち合わせをしているのである。今度の芝居がこれまでで一番大規模なものになりそうだから(会場は小さいが)、これまで劇団に参加してきたスタッフ、キャストのプロフィールを全員紹介しようと話し合って、見本刷りができてきたのを私は見ている(あくまで夢なんで、現実にこういうパンフはまず作らない)。

 劇団を作ってそろそろ10年になろうかという、歴史だけはそれなりにあるので、関係してきたスタッフ・キャストを客演・お手伝いも含めれば30人くらいにはなる。
 なのに全然大所帯になる様子もなく、キャストを集めるのにも苦労している一番の原因は、主演女優がどんどん辞めていってしまうことにあるのだが、その大半はあえて名前は伏せるけれども関係者にはバレバレな、ある特定個人のせいだったりする。
 まあねえ、あの件とかあの件とか、我々も散々な目に合いはしたが、長い人生、いかんともしがたい運命というものもあろうから、今更何か文句を付けようなんて気は全くないし、少しも恨んだりしていないのである。
 基本的にうちの劇団、出入り自由だから、特に申し出がない限りは正式に退団ってことはない。だから彼のこともまだちゃんと劇団員だと思っている。バツが悪くて顔も見せられないんだろうが、声をかけてくれば、元気にやってるか、くらいの挨拶はする。カネの無心は断るが(笑)。
 けれども、ウワサを聞くと未だにあの件と似たような失敗ばかり繰り返しているようなのだね。いくら何でもちょっと学習能力がなさ過ぎやしないか。
 もう夢なんか見てないで汗水流してちゃんと働けってば。パソコンなんて君には要らん。

 夢の話なのにちょっと現実が混じってしまったが、パンフの中に懐かしい顔がいくつもあったので、ちょっとムカシに思いを馳せてしまったのである。
 あの娘やあの娘は、今ごろどうしているのかなあと写真を見ていきながら、その中に一人の男の子の顔を見つけて、ハッとしたところで目が覚めた。

 赤煉瓦に行った帰り道、車の中でしげに夢を見た話をした。
 「K君、今頃どうしてるかなあ」
 久しぶりにその名前を私が口にするので、しげは意外そうに眉間に皺を寄せて横目で私を見た。K君というのは劇団の創立メンバーの一人で、「P.P.Produce」の「パンプキン・パラダイス」というネーミングも彼が発案した。創立時のうちの劇団の中核をなしていたと言っていい。
 彼にはある持病があって、当人もそれが悪化する危険を感じていながら、「今のうちにやりたいことをやるんだ」と言って、本当にエネルギッシュに活動していた。どれくらいエネルギッシュだったかというと、ピースボートに乗って世界一周の旅に出ていたくらいである。
 劇団の練習に参加しているときも、エチュードをやらせれば抜群に上手く、天性の才能があると思った。贔屓目ではなく、彼がプロの役者になれば舞台であろうと映画であろうと、シリアスなドラマもコメディもこなせる個性的な俳優になれていたと思う。

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08月11日(木)
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