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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■水木主義者の至福
天神須崎公園の福岡県立美術館で、「大(Oh!)水木しげる展」の最終日を見に行く。
先週の「平賀源内展」にはしげを誘えなかったが、今日は一緒。けれど、筋肉通のしげには、立ちっぱなしの美術館はちょっとつらかったようだ。最終日のせいかお客さんも結構多かったし。
入口に貼られている水木さんからのメッセージが楽しい。
「会場に入ったら口を開けて見て下さい。口を開けているときは何も考えていないでしょ。無が入ってくるんです。会場を出るとき口を閉じればいい。ワッハッハ!」
爆雷で片腕を失うという悲惨な戦争体験をしていながら、こういう境地に辿り着けるというのが最高である。展覧会では、アノ戦争がどんな戦争だったかも、水木さんの自伝・実録マンガを辿りながら追体験できる仕掛けになっているのだが、当然そこには『劇画・ヒットラー』もある。ある意味、自分の腕をふっ飛ばしてくれた諸悪の根源に対して、同情と哀れみを惜しまぬ水木さんの度量の広さ、ものすごさを、いったいどう形容すればいいものか。
星の煌くほど数あるマンガ家さんたちの中でも、水木しげる、藤子・F・不二雄、永井豪の3人は私の心の中では別格なんだけれども、その中で更に別格、となるとやっぱり水木サンになってしまう。怪奇、恐怖、悲惨、諧謔、諷刺、神秘、幻想、悪趣味、下品、ほのぼの、すっとぼけ、哄笑、悲哀、それらさまざまな要素をないまぜにしたその作風は、唯一にして無二。手塚治虫の模倣者は腐るほど現れたが、ある意味手塚作品よりも人口に膾炙しているとさえ言える水木作品の追随者は、数えるほどしかいない。会場にはDVDで荒俣宏さんと対談している水木さんの映像も流れているのだが、呵々大笑している水木さんって、ご本人が「妖怪」にしか見えないのであった。
会場に入るなり、その水木さんの等身大人形がお出迎えしてくれるのだから、これは実に怖い。しげは思わず私にしがみついていたが、水木さんの人形ならいきなり動き出してもフシギはないかもしれない(^o^)。
各展示場に掛けられていた自伝マンガは既刊作品からの抜粋であったが、やはり少年期、デビュー時代のスケッチや自作の絵本など、見慣れているあの「鬼太郎」タッチとはひと味もふた味も違った細密なデッサンやシュールなダリばりのイラストなどが興味を引かれる。「少年天才画家」と称された、というのは決して誉め過ぎではない。
水木さんの故郷、鳥取県の境港(近年は別のデキゴトでも有名だが)の「水木しげるロード」に展示されている鬼太郎やネズミ男たち妖怪の銅像群もナマで見られた(同じ鋳型から取ったのだそうな)。これでわざわざ鳥取まで出かけなくてすんだな(^o^)。
「百鬼夜行絵巻」など、妖怪資料も数多く展示されていたのだが、中でも目を引いたのは、ご当地福岡のみの展示で、福岡の妖怪と言ったら何と言ってもこれしかない、という「河童」の図である。福岡は遠賀川の「河童大戦」の伝承は民俗学的にも有名で、その手の話を一昔前なら、近所の「河童爺さん」が子供たち相手によくしてくれていたものである。その、『妖怪図鑑』なんかでもよく見かけていた「河童」の現物が、そしてあろうことか、水木さんもマンガの中にしばしば登場させていた「河童の手のミイラ」がこの福岡の博物館にちゃんと収蔵されていたのである。
……ああ、なんだか、「百年の知己」に出会ったみたいで、これ見られただけでも至福を感じちゃうなあ。
帰りに、売店で図録のほかにTシャツ(ネズミ男柄「金は追いかけると逃げる」のロゴ入り)、を購入、それから「妖怪道五十三次」の手拭いを、これはしげにプレゼント。限定販売のフィギュアは断腸の思いで断念。展覧会はこれからもあちこち回って行く予定なので、他地方の方々、ぜひ御来場あれ。
4月29日〜 5月30日 鳥取県立博物館 終了
6月 4日〜 7月11日 福岡県立美術館 終了
8月 4日〜 8月16日 神戸・大丸ミュージアム
8月19日〜 8月31日 京都・大丸ミュージアム
9月11日〜10月31日 岩手県立美術館
11月6日〜2005年1月10日 江戸東京博物館
2005年1月15日〜4月 3日 新潟県新津市美術館
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07月11日(日)
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