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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■またまたクレーマーの話。
 しげの帰りはいつものごとく午前様。というかもう朝の4時である。
 早めに目がさめたので、今日は少しばかりしげと会話ができる。けれどどうもしげの機嫌があまりよくない。どうしたのかと思っていたら、「昨日、あんたウチの店に来たやろ?」と聞く。
 昨夜、映画の帰りにしげの働いてる店に寄ったことを言っているのだが、それがいったいどうしたのかと聞き返してみると、「○○さんの態度って、失礼だった?」と聞き返して来る(○○さんというのはしげの同僚で、夕べはホールで接客の仕事をしていた)。
 私には別にそんな記憶はなかったので、「別に?」と答えたが、しげはやはり浮かぬ顔である。どうも遠回しなモノイイで、何かがあったのかどうか、よくわからない。もう少し詳しく言ってくれ、と頼むと、重い口を開いて、「さっき、クレームの電話があったと」と言う。
 何でも、その○○さんの接客態度が気に入らなかったお客から、電話があり、「責任者を出せ!」とエラい剣幕だったらしい。その時間の責任者はしげだったので、「私です」と答えて応対していたのだが、ともかく何を言って謝っても相手は聞く耳を持たないのだと言う。「申し訳ありません」と言えば「謝ればいいと思ってるだろう」、「上の者に伝えます」と言えば「そうすりゃ自分の責任を回避できるだろう」とか、しげが何か口を開くたびに相手は激昂し、ついには「本社に訴えるからな!」と捨て台詞を残されて一方的に電話を切られてしまったとか。
 「酔っ払ってたんじゃないのか?」
 「かもしれないけど、本社に報告されてクビになったらどうしよう」
 「ないよ、そんなの」
 しげがどうも落ちつかないのは、いったい何で文句を言われているのか、納得がいかないということなのだった。仮にこれが原因で仕事を辞めなければならなくなるとしたら、自分に落ち度があるわけでもないのに、こんな理不尽なことはない、と言う。
 確かに、しげの話を聞く限り、しげに何か落ち度のようなものがあるとは思えない。だいたいしげ自身、問題の当事者ではないのだ。しげが「理不尽だ」と主張するのももっともである。
 そのお客さんが何に腹を立てたのかは分からないが、それも多分そうたいしたことではないのではないか。虫の居所が悪くてヤツアタリしたとか、そんなところだろう。この手のクレーマーはたいていは相手をペコペコ謝らせたらそれで気が済んで、それ以上は絡んでこないものだから、そう大変な事態に発展することはないと思うよ、と慰めておく。
 客商売をやっていれば、どうしたってその手の理不尽なクレーマーには必ず出会う。会社の方だって、それくらいのことは承知の上だろうから、仮にクレームが本社まで伝わっても、それまでのしげの勤務成績から考えて、本社がしげの首を切ることはあるまいと思われる。しげは確かに大雑把で乱雑で失敗も多いが、カネの絡んだ仕事に関して手抜きはしない(エラい信用の仕方であるな)。多分、本社の方もそれくらいのことは把握してるだろうと思う。
 それに万年人手不足の状況で、この程度のことでクビは切られやしないって。


 今日は一日、仕事で出張。いろいろ会議に出るのだけれども、結構ギスギスした方々がいらっしゃるので、正直言ってツラかった(T∇T)。こんなケツロン出してていいの? という疑問もないわけではないのだが、さっきのクレーマーではないが、「自分が正しい」と思いこんでる人を相手にして何か文句を付けても事態は紛糾して悪化するばかりである。「こうしたほうがいいと思うんだがなあ」というアイデアは、たいていの場合、相手のプライドを傷つけ、逆切れさせる結末になる。自我肥大を起こしてる人間というのは、別にこちらが相手を見下しているわけでもないのにこちらの一挙手一投足に難癖を付けて、勝手に「馬鹿にされている」と思いこんでくれるから、厄介この上ないのだ。

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05月08日(土)
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