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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■暗い話、えとえと、……何題?/『風雲児たち 幕末編』3巻(みなもと太郎)
訃報が二つ。
俳優、名古屋章(なごや・あきら)さんが昨24日、肺炎のために死去。享年72。
こういう脇役に徹していて、あまりにも代表作が多い方は、かえってこれという作品を提示して思い出を語ることが難しい。
各新聞記事も苦労をしているようで、「『放浪記』(昭和37年)や『天国と地獄』(38年)で印象を残した」とあるが、実際はどちらもチョイ役だったりする。この間、うちで『天国と地獄』を見ていたよしひと嬢が、刑事の一人が名古屋さんだったのを見つけて驚いたくらいだ。これが代表作だと言うなら、『天国と地獄』でなんて役を演じてたか答えてみい。
また、『ひょっこりひょうたん島』の二代目ドン・ガバチョには触れているのに、2年もの間、霧隠才蔵を初めとして様々な役を演じ分けた『真田十勇士』には言及していない。『美人はいかが?』や『コメットさん』のことは書いても、それこそ5部まで続いた『刑事くん』の時村重蔵署長については語られない。いつも思うことだが、こういう訃報を記事にする人というのは何の資料をもとにして書いているのだろうか。
特撮ファンはその点、『帰ってきたウルトラマン』のナレーターや『ウルトラマンタロウ』の朝比奈勇太郎隊長を挙げればいいから楽なものである。アニメファンには『空飛ぶゆうれい船』の嵐山パパが記憶に残っているだろう(『もののけ姫』にも出てたはずだが、何の役だったか思い出せん)。でもこれらをして名古屋さんの代表作と語るのはどうかと思う。もちろん、名古屋さんは朝比奈隊長役には本腰を入れて取り組んでおられた。DVD『帰ってきたウルトラマン』の封入パンフのインタビューでは、ウルトラマンのSFとしての魅力を滔々と語られている。
SF作品に対して偏見なく接してくれて、本気も本気で演じて下さったその心の広さを思うとき、感謝の涙が流れてしまうのを私は抑えることができない。
けれど、だからこそ思うのである。
名古屋さんを語るのに、ウルトラシリーズだけを挙げるのは偏り過ぎてはいないだろうかと。そう思うのは、名古屋さんが演じられたどの役を口にしてみても、「それだけの人ではない」という感慨が自然に思い浮かんでしまうからだ。
実直な善人を演じることの多い名古屋さんだったが、和田誠監督の『麻雀放浪記』では、「上州虎」というイカサマ師役をいかにも楽しそうに演じていた。私の名古屋章ベストワンはこの演技である。芸達者とはよく言われるが、こういう役をご本人はもっと演じたかったのではないか。
その和田監督の追悼の弁。
「いろんな役柄ができ、せりふ回しが非常に明りょうで良い日本語が使える人。独特の味付けで役柄をしっかり膨らませてくれるので、頼りがいのある役者さんだった。もっとたくさんの作品に出てもらいたかったので、残念でならない。
」
同感である。これ以上、付け加える言葉を、私は持たない。
もう一つの訃報。
『よたろうくん』の作者、山根赤鬼(やまね・あかおに)さんが同じく24日、大腸がんのために死去。享年67。
代表作といわれる『よたろうくん』だが、これをリアルタイムで楽しんで読んでいたのは、私より少し上の世代だろう。ユーモアよりもギャグが好きだった私は、復刻された際にも、山根さんの作品にはあまり手を伸ばさなかった。
にも関わらず、子供のころ、私はしょっちゅう山根兄弟のマンガに触れていたのである。学習雑誌の挿絵などで「やまねあおおに・あかおに」と書かれたサインに、「本当に鬼みたいな人が描いてるんだろうか」とやたら気になっていた。
実は未だにお二人の絵の違いが私にはわからない(別々にマンガを描かれるときは絵柄を変えるのだが、合作する時には本当に似た絵を描くのである)。いつかその区別を付けてやろうと思っているうちに片方が亡くなられてしまった。またどこかの出版社で、作品集が復刻されないだろうか。
毎日書くのもなんなんだが、首吊り紐は今日もブラブラ揺れている。
いや、これを首吊り紐と考えるからよくないんであって、もっと、プラス思考で考えないといけないのである。輪っかがぶら下がってるからと言って、それが首吊り用とは限らないではないか。
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06月25日(水)
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