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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■壊れる妻/『ゆうきまさみのはてしない物語 〜天の巻』(ゆうきまさみ)/『ロケットマン』5巻(加藤元浩)
 大友克洋監督の新作『スチームボーイ』が公開予定の10月には完成しないことがハッキリしたようで、バンダイビジュアルが公開延期を公表。
 「現在、完成に向けての最終段階の作業を続けておりますが、ラストのクライマックス・シーンが質・量ともに当初の予想をはるかに超えた緻密な作業が必要な状況に立ち至ってしまいました。最高の作品として完成させるために、甚だ遺憾ではありますが、今秋の公開を見送らせていただき、作品をベストな形で完成させた上で、改めて来年の公開に向けてチャレンジさせて頂くことになりました」ってことだけど、「チャレンジ」って何なんだそれは。映画制作は「仕事」だろう。いつから大友克洋は「冒険野郎」になったんだ。
 まあ、スケジュールの見積もりが甘いってのはアニメ制作にはツキモノなんだし(なんでそんな無理なスケジュールを立てるんだよって現場の意見は、初めから無視されることが多い)、未完成のまま公開した『火垂るの墓』とか『春エヴァ』、『ガンドレス』よりゃ良心的と言えるのかもね。
 しかし、こないだ『死霊のはらわた』の上映会で会った映像制作会社の知り合いも『スチームボーイ』に期待してたけど、そんなに大友克洋って信頼されてるのか。大袈裟なもの作るとあの人たいていコケてんだけどねえ。『メトロポリス』や『スプリガン』を見て、まだあの人に期待するか? っつーか、『アキラ』の時点で底が見えてたと思うんだが。
 どっちかと言うと、『老人Z』や『最臭兵器』みたいなギャグ路線の方が好きなんだが、そっち方面じゃ世界には紹介できないのかねえ。
 でもとりあえずは見に行くよ、鈴木杏出るし(^o^)。


 例のアンマンの国際空港爆発事件で、毎日新聞の五味宏基記者が記者会見。
 何度も頭を下げて、自らの不注意が引き金となって事故を引き起こしたことについて、「道義的責任を一生背負って生きていこうと思う」と語る。
 この事件の報道がまとまった形でなされるのもこれが最後になるんじゃないかな。イラク戦争も既に事後処理ってことでしか語られなくなってるし。
 まあ何度も書いてる通り、私は戦争そのものには何の興味もなくて、それすらもワイドショー感覚で楽しんでる脳天気な人々の方にずっとお笑い感覚を刺激されてしまうわけだが、この五味記者が最終的にイラク報道のオチをつけてくれたって点で、全く世の中というものはよくできていると思うのである。こういうバカが最後に登場してくれたってことが天の配剤なのかねえ。
 もちろん五味記者はただのバカなんだけれど、博多弁で言えばこういう人が「のぼせあがり」なんである。「戦場だってことを自覚してなかったのか」という批判は実は当たっていない。「ホンモノの戦場」だからこそ、爆弾拾って帰ろうなんて非常識な思いに駆られちゃったのだ。「イラク戦争を取材した証しを持っておきたかった」なんて五味記者のコメント、「甲子園の土」と同じ感覚ではないの。
 でも、そういう感覚にとらわれてなかった日本人があの戦争の最中にどれだけいたかね。ヒステリックに反戦を唱えてた連中も、アメリカべったりだった連中も、本質は五味記者とたいして変わらんがな。もしそこにそいつらがいたら、爆弾ならずとも「何か」を持って帰るくらいのことは「のぼせあがってた」日本人なら誰だってしかねなかったと思うがねえ。実際、してるんじゃないか。
 五味記者は、戦争のさ中にいたからって、必ずしもその実態を理解できるものではない、ということを証明してくれたことで、凡百の「戦争論」を机上の空論化してくれた。戦争体験者だって国際通だって、所詮は自分の知る狭い範囲でのモノイイしかできゃしない。日本人がエラソウに戦争を語ること自体、今や滑稽なんである。
 いつもはこういう「バカの罪」が報道されるたびに、救われない気分になるのだが、今回は私としては「功」はあったなあと思う。何かを語ることを仕事にしてる人たちを別にして、一般大衆が自分に関係ない戦争について訳知り顔で語ることくらいバカなことはないってこと。


 朝方しげがまた「気分が悪い」と言うので、仕方なくタクシーで出勤。

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06月19日(木)
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