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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■健康じゃないけどとりあえずは……/『名探偵コナン 特別編』19巻(青山剛昌・山岸栄一)
昨日の『日本庭園の秘密』の続き。
また、クイーンの映画に関する趣味がそこここに見られるのも嬉しい。
エヴァを取り合う二人の男、スコット医師とテリー・リングは、一方が知的なダンディ、一方が野卑な乱暴者と好対照だが、スコットは作中、エヴァに向かって、「レスリー・ハワードとかクラーク・ゲーブルにうっとりすることは?」と聞く箇所があるのだ。
もちろんこの二人の役者は、1939年の映画『風と共に去りぬ』でハワードが知的なアシュレーを演じ、ゲーブルが野性的なレット・バトラーを演じているが、マーガレット・ミッチェルの手になる原作小説が出版されたのがまさしくこの『日本扇の秘密』の出版されたのと同じ、1936年なのである。この小説は出版当時から映画化が決定しており、誰が誰の役を演じるかが巷間、噂されていたのだが、さて、この二人の名前が登場しているのは果たして偶然の一致かクイーンの慧眼か。
ついでだけれど、映像化されたエラリイ・クイーンについて。
最初の映像化は1935年の“The Spanish Cape Mystery”。もちろん『スペイン岬の秘密』の映画化である。エラリィ役はドナルド・クック、監督はルイス・D・コリンズ。レナード・マーティンのビデオガイドによれば☆☆1/2。結構評判はよかったようだ。
続いて、1936年の“The Mandarin Mystery”。原作は『チャイナ・オレンジの秘密』。エラリィ役はエディ・クィラン、監督はラルフ・スタウブ、どうやらコメディ仕立ての映画になっていた模様だが、当時の探偵ものはだいたいそういう感じのものが多かったようだ。クイーンが後に映画化をしぶるようになるのもこのあたりに理由があるのかもしれない。
三人目のエラリィが一番有名で、シリーズ化もされた。近年まで『大逆転』や『プリティ・ウーマン」などにも顔を見せていたラルフ・ベラミーである。
“Ellery Queen, Master Detective”(1940/カート・ニューマン監督。原案は『日本扇の秘密』だけれど、キャラクター名は変えられ、もちろん日本的なものは一切登場しない)
“Ellery Queen's Penthouse Mystery”(1941/ジェームズ・ホーガン監督。以下同じ)
“Ellery Queen and the Perfect Crime”(1941/原案は『悪魔の報復』)
“Ellery Queen and the Murder Ring”(1941/原案は『オランダ靴の秘密』)
の四本が制作、これは全て映画用にクイーン自身が脚本を書き下ろしたもので、マーガレット・リンゼイ扮する女探偵ニッキー・ポーター(この名前が『ジゴマ』に登場する探偵ニック・カーターをもじっているのは明白。クイーンはニックものの映画化も手がけたことがある)とコンビを組む形が作られた。とは言っても、実はその前年のラジオドラマ化でニッキーは既に登場しているのだが。片岡千恵蔵の多羅尾伴内、金田一耕助シリーズに、助手として女探偵がいつもくっついてるそのルーツはこのあたりにあるだろう(『影なき男』シリーズは夫婦だしな)。
後に最初の三作は小説化され、それぞれ『消えた死体』『ペントハウスの謎』『完全犯罪』と題して『エラリー・クイーンの事件簿』に収録されたが、実はこれは全て代作者の手になるもの。原案作品と読み比べてみるのも一興だろう。
リンゼイのニッキーは変わらず、監督もホーガンのまま、エラリィ役者だけをウィリアム・ガーガンに変えて、更に三作、“A Close Call for Ellery Queen”(1942)、“A Desperate Chance for Ellery Queen”(1942)、“Enemy Agents Meet Ellery Queen”(1942)が作られる。
これら戦前作品はみな日本未公開。全て日米の関係が悪化した時期の作品だから仕方がないのだが、これだけの作品が作られていて、戦後になっても一本も輸入がなかったというのは不思議ですらある。
各役者の当時の写真を御覧になりたい方は次のサイトをどうぞ。でもどいつもこいつも鼻眼鏡付けてないんじゃ、エラリィとは言えないよね。
http://www.mindspring.com/~mkoldys/movies.htm
エラリー・クイーンの活躍は、戦後はテレビに舞台を移す。
こちらは数が多いので、とても書ききれない。でもそのほとんどが日本未輸入。詳細は次のサイトでご参照下さい。
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06月14日(土)
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