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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■雪がとっても白いから/『あひるの王子さま』5巻(森永あい)
 夕べから冷えこんでいたので、さて、雪でも積もってたら厄介だな、と思って外を見てみたのが朝の5時頃。寒くて目が覚めてしまったのである。
 でも外は別に地面が白いというほどでもなく、ヤレヤレ、とヒト安心した。
 ところが7時を過ぎるころ、しげが外を覗いて「積もっとうよ!」。
 ……わずか2時間ほどの間に積もったのか、それとも未明の私は眼がどうかしてたのか。
 どっちにしろ、雪が降ってるとしげは怖がって職場まで送ってくれない。
 仕方なく、タクシーで出勤。今年は珍しくしょっちゅう雪が積もる。

 タクシーの運ちゃんとの他愛のない会話。
 運「今年は珍しく雪が積もりますねえ」
 私「最近にしちゃ珍しいですねえ」
 運「最近は2年にいっぺんも積もればいい方でしょう」
 私「2年前にはちょっと積もりましたけどね」
 運「そうでしたかねえ」
 私「坂道が滑って車が登れなくて大変でしたよ」
 運「私らが子供のころには毎年のように積もってましたがねえ」
 私「雪合戦とかしてましたねえ。雪だるまも必ず作ってました」
 運「やってましたねえ」
 私「このトシになると、雪なんて鬱陶しいだけでしょう」
 運「そうでもないですよ、やっぱリ子供に返って雪だるま作ってみたくなるとき、ありますよ」

 ふと、思い出した。
 私が雪だるまを最後に作ったのは、多分、高校生のときである。
 ウチの店の真正面に、飾りのつもりで作っておいた。
 そこへ通りかかった小学生が、急に「ええい! ええい!」と叫んで、手に持っていたカサで雪だるまを殴り出したのである。
 私は外に出て、子供を「コラッ!」と叱った。
 子供はビックリしてピョン、と飛びあがり、向こうへ逃げて行った。だが、しばらくして立ち止まり、不思議そうにこちらを振り返った。
 「なぜ自分が叱られたかわからない」、そんな顔だった。

 ムシャクシャして道端の壁やらポストやら地蔵やらを蹴飛ばすオトナも世の中にはいるし、こういう子供も決して珍しくはないのかもしれない。
 ただ、私には道端に作ってある「雪だるまを壊す」という発想が昔も今もない(そう言えば道端のものを蹴ったりした経験も全くないな)。目鼻が落ちてた雪だるまを直してやった経験ならある。
 あの時の子供の行為は、ちょっと蹴飛ばすなんて程度ではなかった。
 よっぽど腹に据えかねたことでもあったのか、いきなり傘を振り上げ、骨も折れんばかりに雪だるまを殴りつけていた。
 そこは往来だし、歩いている人もいた。店のガラス戸から外は丸見えだから、ちょっと中を覗けば、私の存在にも気づいたはずである。
 だが、彼には眼の前の「壊すべき」雪だるま以外には何も見えていなかった。興奮して明らかに我を忘れていたのである。
 なぜ、彼は大声を張り上げ、あそこまで雪だるまに自らの憎しみをぶつけなければならなかったのだろう?
 私の眼からは、あの時の子供はやはりどこかが狂っていたのではないか、としか思えない。キレる子供なんてのは、別にここ最近になって生まれてきたわけではない。確実に、昔から、どこにでもいた。
 私だって、決して精神が常に安定していたわけではない。雪だるまを壊しこそしなかったが、「別の何か」を壊してきていたのかもしれないのだ。
 ただ、それは自分自身には決して見えない。見えないから狂っていられるのだ。
 私は何を壊してきたのだろうか。
 あの時の子供のように、私は今もなお狂ったまま、キョトンとしているだけだ。

 桜は人を狂わせるっていうけど、雪にもちょっとそんなところがあるのかな。……って、だったら北の方に住んでる人はやたら狂っちゃうじゃんかよ(^_^;)。

 帰りはさすがに雪も溶けた。
 しげも駐車場まで来てくれたので、ホッとする。
 暖かいものが食べたいようにも思ったが、うどん屋の類にしげはあまり行きたがらない。マルショクで弁当や焼鳥を買って帰る。


 しげに、円谷君からメールが送られてきて、「今回の演出を降りる」とのこと。
 やっぱリケツ割ったか、とは思ったが、一応、「理由はなんて言って来たん?」と聞いてみる。

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01月29日(水)
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