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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■役者が名前を出すということ/DVD『You Are The Top 〜今宵の君〜』/『一番湯のカナタ』3巻(完結/椎名高志)ほか
 朝のニュース番組に、中村彰男さんという文学座の舞台俳優の方が出演していらっしゃる。この方、実は『千と千尋の神隠し』で、カオナシの声を担当されていた方だとか。
 映画公開当時はその名前が非公開だったのだけれど、昨年から一般にも知られるようになっていったそうで、そのときの苦労を「『あ……あ……』だけで感情を演じ分けなければならなくて、宮崎監督に何度も注意された」と語る。
 そういう演技指導があったってことは、たとえ「あ……」だけでもちゃんと役者として扱ってるってことだろ? だったら、どうして最初から名前を出さなかったのかなあ。
 まあ、昔も『月光仮面』とか『少年探偵団』の怪人二十面相とか、クレジットの役者名に「?」が出るものが多かったけれど、ああいうのは謎ってことにしてても、ちゃんと視聴者にはわかってたんである。『千と千尋』であえてカオナシをノンクレジットにしなきゃならない理由なんてないんじゃないか。
 いずれこういう形で明かすつもりだった、というのなら最初から明かしといてもなんの問題もなかったと思うぞ。結局、これって「あのカオナシの声の人って誰なのかしら」ってウワサを使った「宣伝」臭いんだよな。なんとなれば、一時期、あのカオナシの声は「宮崎監督自身である」というウワサがマコトシヤカにネットに流れていたんである(そういうウワサが流れたんで発表したのかもしれないが)。
 役者が字幕にクレジットされるのは当然の権利だ、と大上段にモノを言わずとも、その演技をした人がどういう人なのかってことを知りたくなるのは、客の方に自然に起こる心理だ。役者が好きで、その映画を見に行くってのは、ほんのチョイ役の人に対しても起こることだ。
 というわけで、私はその点では『どれみ』もあまり好きじゃないのでした。結局、女王さまの声優さん、誰だったんだよ。


 俳優、田中明夫氏が19日、肝不全のため死去。享年76。
 もう30年近く昔、私が初めて上京したときに帝国劇場で見た舞台が、蜷川幸雄演出・平幹二朗の『ハムレット』であったが、そのときポローニアス(オフィーリアの父ね)を演じていらしたのが田中さんだった。
 悲劇とは言っても、シェークスピアの作品は合間にギャグが差し挟まれて緩急がつけられており、『ハムレット』で言えば、ポローニアスが飛ばすオヤジギャグ(^o^)が前半の見所でもあったのだ。昔の芝居って、今は古くなって見られないんじゃないか、とお考えの方もいらっしゃるかもしれないが、シェークスピアはそう簡単に古びない。実際、田中さんの芝居は会場に大きな笑いを生んでいた。悪役専門、と思われているが、舞台では実に幅広い役を演じられていたのである。
 時代劇の悪役が多かった田中さんのこととて、訃報もまたそれに触れたものが多い。けれど、アニメオタクとしては、まず真っ先に『空飛ぶゆうれい船』の黒汐会長の声を挙げるべきだろう。ボアーの手先として暗躍しながら、結局粛清される、というのは中ボスの運命なのだが、つまりはこいつ、『サイボーグ009』のスカールの原型なのだな('o'=)(原作は『009』よりも以前に描かれている)。そう言えば、時代劇でも本当の巨悪の悪大名より、その手先の悪徳商人を演じることの方が多かったね。
 忘れちゃいけないのはNHK少年ドラマシリーズの『幕末未来人』の大津屋役。歴史を改変、本来あるべき明治の時代をなくして、光文の時代にしちゃったんだから、田中さんが演じた悪役の中でも最高の巨悪であろう。あと、『ウルトラマン前夜祭』ではモンスター博士を演じてたらしいが、確実に見てるんだが古すぎて記憶に残ってない。ビデオ、残ってないんだろうなあ。
 でも、田中さんに善玉役が全くなかったわけでもない。実写版『鉄腕アトム』の初代お茶の水博士は田中さん(2代目は森野五郎)。残念ながら付けバナはされていなかったが。

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01月22日(水)
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