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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■肉!肉!肉!(トラ!トラ!トラ!)/『新世紀エヴァンゲリオン』8巻(GAINAX・貞本義行)
 しばらくサボってたが、そろそろ病院に行かねばクスリが切れる。
 クスリが切れるとどうなるかというと、ともかくカラダがダルくなって、階段を登るにも手すりに持たれかからなければ上がれず、息が切れ動悸は激しくなり血管がうずいて頭痛がし、気力がなくなって人生に嫌気がさし、不法に手に入れた拳銃でもって、通りがかりの「てゆ〜か」なんて言ってる生意気なコギャルを撃ち殺したくなるのである。
 ではクスリを飲むとどうなるかというとひたすら眠くなるので、仕事中もふと気が付いたらイネムリしたりしている。これじゃ仕事にならないなあ。
 ……どんどんクスリを飲もう。

 休日の外出にもしげの車を足に使っているので、しげの機嫌はあまりよくない。かと言って使わないで無視してると「オレのこと嫌い?」と言って泣くので、結局拗ねられる点では同じなのである。だったら「使えるものは親でも使え」である。……諺っぽいけどなんだか下卑てるな、このコトバ。いったい誰が言い出したんだ。
 病院は超混雑していてとても診療時間内に診察が終わりそうな気配がない。検査だけしてもらって、診察は今回はオミット。とりあえず血圧だけは良好だと看護婦さんから聞く。この「血圧だけはいい」おかげでなんとかカラダが持っているのである。

 比恵で車を駐車場に置いて、地下鉄で中洲へ。
 博多座の紀伊國屋に、オタクアミーゴスのチラシを50枚置かせてもらう。天神や博多駅バスセンターと違って、ここの紀伊國屋は演劇専門店なので、チラシ置きが可能なのである。
 ちょうど博多座では、高校演劇の九州大会が行われている。学生さんがこのチラシを見て興味を抱いてくれたら、若いオタクの掘り起こしになるのだが。でも基本的に学生さんはおカネがないからなあ。
 不況のせいもあるのかもしれないが、中高生の1ヶ月の小遣いが「5千円以下」というのはよく聞く。もちろんこれには学校での昼食代や日頃の服飾費などは含まれないのだが、それにしても少なすぎる。私が高校生の頃だった20年前、月に2万円は貰ってたんだがなあ(今の物価に改めれば4万近くになるだろう)。
 まあ、演劇やろうなんて子の中には、大金持ちのボンボンやお嬢ちゃんが案外いたりするから、オタアミチケット3500円くらい屁のカッパよ、ってな具合に来てくれるかもしれない。


 紀伊國屋で、ついでに何かええ本はないかと思って物色していると、店員さんが電話で話している声が耳に入った。何やらお客さんから注文を受けて、本を探している模様である。
 「あの、井上ひさし作の、『脱線トリオのコント集』、ありませんか?」

 ……先に申し上げておくが、私は基本的にお節介は嫌いである。いや、あえて「イジワルである」と言ってもいい。
 ネットの掲示板などで、「○○について教えてくれませんか?」という類の書きこみがあって、その答えを知っていても、「誰かがレスつけるやろ」とか、「人に聞く前に、自分で調べんかい!」と思って無視することも多い。

 しかしである。
 お笑いファンならば、私の気持ちは理解していただけるだろう。この「間違い」だけは、どうしても聞き逃すわけにはいかなかったのだ。
 気がついたときには、横から口出ししていた私がいた。
 「あの、それ、『脱線トリオ』じゃなくて、『てんぷくトリオ』です」
 店員さん、驚く。そりゃそうだろう。ヘンなオヤジがいきなり割り込んで来たのだから。
 「タイトルも『井上ひさしナントカ劇場』(とっさで思い出せなかったが、正確には『井上ひさし笑劇全集』である)って言ってたと思いますよ」
 「あの、出版社はわかりますか?」
 「講談社文庫から上下巻で出てました」
 井上ひさしがまだ売れてなかったころ、ストリップ小屋の前座に出ていたてんぷくトリオ(三波伸介、伊東四朗、戸塚睦夫)のためにコントの台本を書いていたことは演劇関係者にとってはつとに有名なのだが、もう若い人にはそういった事実はおろか、脱線トリオ(由利徹、南利明、八波むと志or佐山俊二)との区別もつかなくなっているのである。

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12月21日(土)
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