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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん/アニメ『プリンセスチュチュ』第1話/映画『ピンポン』
排水溝が詰まったせいか、クーラーから水がシトシト垂れ始めた。
3、4年前にもそんなことがあって、そのときは電器屋さんに来てもらって、掃除機でゴミを吸い取ってもらったのである。
要領は解っているので、今度は自分でゴミを吸い出しゃいいや、と思って、しげに「掃除機出して」と頼む。
「掃除機あるけど、困っとうっちゃ」
「何が」
「本体はあるけどホースがないと」
「……なんで?」
「さあ?」
「さあじゃないだろ、使って片付けたの自分なんだから思い出せよ」
掃除機の在り処はしげの頼りない記憶を頼みにするしかないが(矛盾した表現だよなあ)、問題は滴り落ちる水である。
洗面所からバケツを持ってきて、滴りの下に置く。
……なんだかこういう光景、昭和初期の日本映画でよく見たなあ。マンガでも40年代頃まではこんな絵がよく出て来てたものだったけど、ありゃ雨漏りだったな。現実の雨漏りを経験したことはもう三十年以上も昔だ。なんだか懐かしいなあ……って懐かしがってどうする。
バケツを置いても結構な高さがあるので、飛沫が撥ねて絨毯はやっぱり湿ってしまう。それで絨毯の上にバスタオルを敷いて、その上にバケツを置く。バケツはほぼ6、7時間ほどで一杯になる。水をベランダに流そうとして、手がすべる。バスタオルも絨毯も水浸し。
なにやってんだろうなあ、オレ。
昼間、しげの白髪を抜きながらCSキッズステーションオリジナル制作アニメ第3弾、『プリンセスチュチュ 卵の章』1.AKT「あひると王子さま」を見る。
『セーラームーン』『魔法使いTai!』のスタッフが再結集、という触れ込みだが、より原案・キャラデザインの伊藤郁子色を前面に出したって印象。佐藤順一監督はサポートに回ったって感じだね。
『Tai!』も相当ヘンなアニメだったけれど(なぜナルト?)、それがマトモに見えるくらいヘンなアニメにしあがってるよ。
一見、ごくフツーの人がごくフツーに生活してるように見える街、金冠町。
そこにバレエを初め、芸術を教える金冠学園という、大きな学校がある。
ヒロインの女の子の名前はあひる。
ドジでノロマだけれど、プリマを目指して、初級クラスに通っている。
なぜかクラスの先生は猫。でもどうやらそれがこの「世界」では普通のことらしい。
「世界」?
そう、この世界はどうやら不思議な世界。
昔々、悪いオオガラスと戦って、そのときに受けたキズがもとで心をなくしてしまった王子様の、心のカケラが散らばって、どこかに眠っている世界。
あひるもホントは、ホンモノのあひるなのだ。
ある日、水辺で悲しみに沈みながら踊る美しい王子様を見て、「この人を助けたい」と思った。
そこに現れた謎のお爺さん、ドロッセルマイヤー。
「王子様の心を取り戻すために、プリンセスチュチュになるかい?」
と、無気味に笑う。
王子様は今、「みゅうと」という名前になって金冠学園にいる。あひるは言う。「王子様を救えるなら、死んでもいい」。
そして、契約はなされたのだ。
うーむ、こりゃ、伊藤&佐藤版の『少女革命ウテナ』だね。
え? そんなに妖しいのかって? 妖しいですよぉ(* ̄∇ ̄*)。
なんたって、「心をなくした王子様を助けるお姫様」の話なんですから。
巣立ちを迎えたヒナ鳥が屋根から飛び立とうとしている。
みゅうとは、それを窓から身を乗り出してぼんやり見つめている。
寝起きなのか、彼は裸の上にシャツ一枚。
風にシャツの端がはためいて見えそうだ(何が)。
その風に煽られたか、ヒナ鳥はバランスを崩して落ちる。
みゅうとは思わず窓から飛び出す。
心をなくしているから、自分の命の危険すら分らないのだ。
ドロッセルマイヤーの声があひるの心に響く。
「このままだと王子様が死んじゃうよ」
そのとき、あひるのペンダントが光る。
あひるの姿がまばゆいばかりの光に包まれ、プリンセスチュチュに。
音楽が鳴り響く。あの曲は。
「花のワルツ!」
校庭一面に広がる、花、花、花。
その花の中に落ちるみゅうと。
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08月17日(土)
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