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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■病院への長い道/『エンジェル・ハート』4巻(北条司)ほか
 ここのところ、通院が途絶えている。
 体重の変化はなく、太っても痩せてもいないが、病状もつまりは変化がないということである。つまり決してよかあないってことなんだけど。
 このまま全く検査をしない、というわけにもいかないので、今日こそは病院に行こうと思っていた。
 しげも最近体調を崩すことが多くて、朝夕の送り迎えもままならなくなっている。誰しも一年にいっぺんくらいは悪いところがないか診察してもらったほうがいいのだけれど、しげのように会社に属していない者は、たいていこれをサボる。で、ガンだのなんだのに冒されて手遅れってことになってしまうのである。というわけで、昨日からしげには「お前もついでに健康診断してもらえ」と命令しておいた。
 ……おっと、こんな「妻の身を案じる夫」のフリをしていると、またしげから「偽善者」と呼ばれてしまうな。もちろん、私の思惑は、しげのどこにも異状がなければ、文句を言わせずこき使おうというハラである。

 9時を過ぎてもフトンの中で丸まっているしげに、声をかける。
 「オイ、病院行くぞ」
 しげ、顔も出さずに、恨めしげな声で、「……行かん」。
 「なんでだよ、昨日、行くって約束したじゃないかよ」
 「だって、何て言えばいいのかわからん」
 「健康診断してくれって言えばいいじゃん」
 「それでどこも悪くなかったら、『コイツ、健康なくせに病院に来やがって』とか思われるもん」
 そんな医者がどこの世界におるか。
 要するにしげは病院が怖いのである。
 「注射が怖いんか? 四の五の言わずに行くぞ」
 「アンタ一人で行ってきい」
 またいつもの対人恐怖症である。
 いつもなら、しげなんかほったらかして自分だけ出かけるところだが、いい加減、譲歩してやるのにも飽きた。バカにはバカと、ハッキリ言ってやらねばかえって酷だ。
 しげを少しばかり「優しく」説得する。

 どてぽきぐしゃ。

 予定より2時間ほど遅れたが、「説得」が功を奏して、しげ、出かけることをしぶしぶ承知する。……全く、病院に行くまでに体力気力消耗させやがって、グスグス泣くんじゃねえ、どうせ行ったら行ったで、開き直って受診するに決まってるくせに。
 案の定、行き付けの病院に出発したときにはしげの涙もすっかり乾いていた。
 病院に着いた時には、もう11時を回っていたので、待合は結構混雑。
 散々待たされて、尿検査と採血。採血の結果はすぐには出ないが、尿の結果はいつもと変わらず悪い。ここんとこまるで運動してないしなあ。診察してくれたのは、かかりつけの先生ではなくて院長先生。時間帯がズレたので交代したのか。
 「あの、最近、腕がよく痺れてるんですけど」
 「両方ですか?」
 「いえ、片方だけです」
 「じゃあ糖尿のせいではないですね」
 「……寝違えただけですかね」
 「そうでしょう」
 ちょっと疑心暗鬼になりすぎた感じだったが、かと言って油断して食べすぎないように注意はしなければなるまい。前回の検査結果も相当悪いのである。
 しげは心電図まで取られたそうだが、どこといって故障はなかったとのこと。
 と言うことは、具合が悪いとしょっちゅう言ってるのは、仮病かダラクサ(=ナマケモノ)なのかどっちかだな。
 このやろう、思いっきりこき使ってやるから覚悟しろ。~凸(-~~- )

 しげ、「ねえ、オレがどこも悪くなくてガッカリ?」と出かける時の泣き顔はどこへやら、ケロッとして聞いてくる。
 呆れて「バカ」とだけ返事。それ以外に答えようがないわい。


 コンビニで『週間文春』を立ち読みしたら、小林信彦さんが『人生は五十一から』でヘンリィ・スレッサーが今年の4月2日に亡くなっていたことを書いていた。ああ、その死亡記事は見逃してたな。

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07月13日(土)
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