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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■えすぽわ〜る、とれびや〜ん/『ブラックジャックによろしく』1・2巻(佐藤秀峰)/『アグネス仮面』2巻(ヒラマツ・ミノル)ほか
 自宅の近所に、「エスポワール」という名前の「パスタとコース料理」のレストランがある。
 近所と言ってもこれが大通りに面してるとか、そんなんじゃなくて、路地裏の、しかも小さな町工場とか民家の間にポツンとあるのね。ある意味、目立ってるんだが、いや、これを目立ってると言っていいのかどうか。「浮いてる」と言ったほうが正しいかも。
 ともかく、一度行ってみたいと前々から思ってたんだけど、何しろ違和感がすごくってさあ、夜なんか電飾キラキラしてるし。ショーウィンドーのマネキンって、たいてい西洋人じゃん、その中に一人だけ侍が混じってる感じ? 違うか。
 でもまあ、何となく入るのが怖い感じはあったと思し召しくだされい(口調まで侍になるなよ)。
 だけど、ついに今日!
 その店にぃっ!
 「でいなあ」を食べるためにぃぃっ!
 入ることにぃぃぃぃっ!
 したのだああああああ〜んあんあんあんっ!(コブシつき)
 ……アホか。

 ところがしげが浮かぬ顔をしている。
 しげも前々から、この店には興味があって(通りがかった人間は多分みんな「なんでこんなところに?」と興味を覚えるだろうが)、行きたがってたくせに、いったいどうしたというのか。
 「あのね、おなかいっぱいと」
 「なんで腹いっぱいなんだよ。なんか食ったんか」
 「うん」
 「なに食った」
 「たこやき」
 タコ焼きと言うのは、先日、スーパーでお徳用冷凍パックを買いおきしてたやつだろう。しかし、タコ焼きをつまみ食いしただけで腹いっぱいとは、いったい?
 「で、いくつ食ったんだよ」
 「全部」
 「ふーん、全部。……って全部ぅ?!(←ダブルテイク)」
 「うん」
 「全部って、あれ、25個入りだったろ!? あれ、全部食ったんか!」
 「あ、でも間を置いて食べたよ」
 「でも今日のうちに食ったんだろ?!」
 「うん」
 「オレの分は?!」
 「え?! あれ、アンタの分もあったん?!」
 「当たり前じゃあああああ!」
 味見一つできないまま全部タコヤキを食われたことは別に惜しくはないが(ちょっとはあるが)、この「好きな食いモノは必然的に全て自分のもの」って感覚はなんなんだ。子供のころの貧乏はここまで人間の心を蝕むのか。一度荒んだ根性は一生変わらないのか。飽くなき貪欲。まるでアシュラか銭ゲバか。
 つつしんで「肉ゲバ」の称号をあなたに送ってさしあげるわ、おほほほほξ^▽〆。(c.江戸川乱歩)
 それにしてもよく25個も食えたな。どこが「最近少食になった」だ。
 「じゃあ、食べるのやめる?」
 「食べる」
 底無しだよ、こいつ。

 で、その「エスポワール」。
 中に入ると、照明をやや落としてシックな雰囲気を演出した、本格的レストランという印象。ますますこんな人通りのない路地荒になは似合わない。客も我々だけだ。
 テーブルや窓のところにはロウソクのランタンが置いてあって、アレですな、恋人どうしが向かい合って話してると薄暗いんで思わず身を乗り出してしまい、顔と顔が近づいて……って、そういうムードを演出してるわけね。
 メニューもアレだね、ファミレスみたいに写真つきのわっかりやすいのじゃなくて、文字だけ横書きの、でもって下にいちいちフランス語だかイタリア語だかが書いてあるやつ。仕事帰りに気安く立ち寄ってんじゃねーよ、この小市民がって威圧感をヒシヒシと感じる。
 ボーイさんももう、腰捻りながら歩いてきて、もういかにも「ギャルソン」って姿勢ね。路地裏のギャルソン。それってギャグだよ(^_^;)。
 肝心の料理だけれど、パスタと肉のコース料理、2300円なりを注文。
 これが実に美味い。
 隠れた名店、というのはウワサにゃ聞くが、ここホントに隠れたところにあるよ。なんで博多もハズレのこんなところに店出してんだ。もったいね〜っつーか、いつか潰れるぞ、絶対。
 鴨肉はまんべんなく火が通っていてしかも柔らかく舌の上でとろけるようで実にジューシィ。パスタの種類も豊富で、イタリアっぽい(名前忘れた)の頼んだけど、スパゲティをピザにしたみたいなんだが、チーズの質がいいのかシツコイ感じがしない。

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07月08日(月)
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