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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■さよなら半村良/ドラマ『盤嶽の一生』第1話/『かりそめエマノン』(梶尾真治)
 終日土砂降り。
 しげが車で迎えに来てくれてなかったら、帰りは濡れ鼠だなあ、と思っていたが、職場の玄関脇に車を停めてくれている。
 しげがこうやって気を遣ってくれることなんて、千年に一度くらいしかないことなので、やたら嬉しい。
 けど、嬉しい様子を見せるとしげは絶対に図に乗るので、ポーカーフェイスで過ごす。
 職場の近所の本屋に寄ってもらうが、目当ての『マニア蔵』、小さな本屋なので置いてない。
 やっぱり昨日、紀伊國屋に寄ってもらってたらなあ、と臍をかむがいたしかたない。
 しげに、「明日は絶対紀伊國屋に寄ってくれよ」と念を押す。
 でもなんか裏切られそうな予感がするなあ。。


 しげ、「シティボーイズのチケット取れたの、夢かもしんない」なんて言い出す。
 しげの杞憂は今に始まったことではないが、それにどう返事をしてやればいいのかね。
 「夢じゃないよ」と言ったって、それで納得できるくらいなら、初めから妄想自体抱かないわけだし。
 ホントに夢だったら泣くだろう。自分で自分が悲しくなるような妄想、抱かなきゃいいのになあ。
 

 仕事帰りに寄ったうどん屋、初めて入った店だったが、中が広くて、感じがいい。
 しげは何となく気分が悪そうだ。余り寝ていないと言うが、しげの「寝ていない」ってのは「6時間しか寝てない」とかだから、余り同情したって仕方がない。確かに目の下にクマができて気分は悪そうだ。
 そういうときに、普通頼むのは、ウドンとか、あっさりしたものだろう。なにのにしげが頼んだのはロースカツ丼。
 値段も良心的で、味も普通、何より種類がたくさんあるのがいいので、ここは結構通いやすいかな、と思ったのだけれど、しげ、「熱くて食べられない」だの、「脂身が多くて気分悪い」だの、わがままばかり言う。
 ……この値段ならたいしていい肉は遣ってないと判断するのが常識ってもんだろうに。第一、気分が悪いなら、こってりした物頼むほうが悪いに決まってる。
 私はそのそばで焼肉オムライス定食を食べていたのであった。
 しげ、帰宅して「眠い」と言ってそのまま寝る。
 クスリ飲むとか、栄養剤飲むとかすればいいのに。


 テレビ、『盤嶽の一生』第1話「わが愛刀よ」。
 全く、知る人ぞ知るって作品を映像化してくれるから、市川崑って侮れないんだよなあ。
 白井喬二の『盤嶽の一生』が新作で見られる日が来るなんてねえ!
 白井喬二って誰だって?
 あのさ、いやしくも時代小説ファンなら、国枝史郎の『神州纐纈城』、中里介山の『大菩薩峠』、白井喬二の『富士に立つ影』くらい読んでないとファンとは言えないぞ。全部文庫で手に入るし。
 もっとも私は全部途中で挫折してるが(^_^;)。
 けど『盤嶽』はなあ。見たくて仕方なかったんだよ。
 愚直なまでに実直、ために逆に世の中のウラオモテも機微もわからず、剣の腕が立つにもかかわらず右往左往する羽目になる浪人、阿地川盤嶽。
 何度か映画化もされ、大河内伝次郎や小林桂樹が彼を演じているが、映画の方も残念なことにお目にかかったことがなかった。
 ……お目にかかりようがないよ、だって大河内版はあの天才、山中貞雄の失われた一本なのだもの。
 今回のテレビ版は、市川崑自身による脚色だが、ベースはあくまで山中貞雄版に準拠するという。
 なるほど、ラストの「騙されて また騙されて 盤嶽よどこへ行く」の字幕テロップは、盤嶽が徹底的に野暮天なだけに、かえって粋だ。
 このテロップの声は誰の声か。登場人物の声でもなければ天の声でもない。
 我々の声だ(音声が出ないとこがまた粋だよ)。
 このへんが山中貞雄テイストと市川崑演出の融合なのだろう(フカサクは、少しはこういうテロップの出し方覚えろよ)。
 主演の役所広司、『どら平太』の時も思ったが、ちょっと力みすぎ。
 ウソに対して過敏に反応して激昂するのはわかるが、いやしくも盤嶽は武士だ。武士としての怒りかたってものがあるはずなのに、どうもどこかチンピラくさい。もう少し固さが取れてくれりゃあなあと思うんだけどな。

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03月05日(火)
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