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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■40歳のロンゲ……髪薄いってのに/『読者は踊る』(斎藤美奈子)ほか
 というわけで10回目の結婚記念日である。
 世間的には大晦日というのだけれど、なんでまたこんな時に入籍したかっていうと、これならそうそう忘れやしない、ってのが一番の理由だったりする。
 でも、しげはすぐこれを忘れるのだ。
 昨日が私の誕生日で、次の日が元旦だったりするものだから、どれが何の日だったかわかんなくなるらしい。それに記念日のプレゼントは買っちゃったし、しげは今日も昼から仕事だし(さすがに夕方でシマイだそうだか)、なんだか記念日を二人で過ごすって雰囲気ではないのだ。

 「せめて、年越しソバぐらい作ろうか?」
 こう言ったのはもちろんしげではなく私である。ウチでの料理はもう私が作ることになっちゃってるのな。
 「ソバも具も材料揃えてさ……」
 「作ってくれるの?」
 そういう会話をしたのが、夕べっつーか、今朝の夜中のこと。
 もうスーパーの類は空いてないので、コンビニに行くが、ポプラを選んだのは失敗だったかも。
 見事なくらいに「正月」を迎える雰囲気がない。
 年賀状くらいは売ってるが、それも微々たるもの。普通は年末に向けて、コンビニも「年越し商品」っていろいろ置いてないか?
 どうも売りきれたんじゃないようなのは、それらしいコーナー自体が全く作られてないためだ。
 一応、鏡モチや雑煮の材料は昨日セブンイレブンで買っておいたのだが、ソバだけはあとまわしにしてたのが失敗だった。
 仕方なく、まあ気分だけでもとカップソバを二つ買って帰る。


 宴会のあとなので、疲れ切っていて朝寝。
 しげにいきなり起こされたのは何時くらいのことだったか。
 多分、9時か10時か。
 「……起きりぃよ、父ちゃんとこに電話しぃ!」(ちょっと注をつけておくが、しげは広島生まれの北九州育ちなので、方言が相当ヘンである。したがってこんな博多弁はない)
 どうやら父から電話があったらしいのだが、今年は特に年末を一緒に過ごす約束はしていない。
 つーか、先日、食事でも時間が空いたらしないかと電話で誘ったのだが、「正月空けるまで予定が詰まっとる」と断られていたのだ。
 その辺の事情をよく知らない(って、ちゃんと言ってるんだが忘れているらしい)しげは、てっきり私が今日、父と会う約束をしておきながら、それを忘れて寝過ごしてるんじゃないかと怒っているらしい。
 しかし、そう気付いたのはあとになってからで、私もいきなり大声張り上げられて起こされた瞬間は、アタマが寝惚けているので、どうしてしげが怒っているのか解らない。
 「なん、どうしたん?」
 「父ちゃんから電話があったよ! だけん電話しぃ!」
 「何の用ね?」
 「知らんよ! いいから電話しい!」
 ともかく凄い剣幕なので、仕方なく父の店(床屋)に電話を入れる。

 「……電話くれたんやろ? なんか用ね?」
 「おう、仕事が暇になったけん、散髪に来んや?」
 そう言えばもう、二ヶ月くらい髪を切っていない。何度かお歳暮持って行ったりして、店に立ち寄りはするのだが、丁度折悪しく仕事中であることが多くて、散髪する機会がなかったのだ。
 けれど、ムリヤリ起こされたものだから、体調は頗る悪い(だいたい父は、私が寝ている時は起こさなくていいからとしげには言いつけてあるのに、しげはいつもそれを無視している。ワザと私の体調を崩そうとしてるのか?)。
 おかげで最悪の声で返事をしなければならない。
 「……昨日も仕事でさあ、そのあと飲み会もあって……」
 「飲んだとや?」
 「いや、飲んどらんけど」
 「そやろう」
 「ばってん、体調がよくないけん、さっきまで寝とった。しげにムリヤリ起こされたんよ」
 「そうや? なら来れんや?」
 「わからん。気分がよくなったら来るかもしれん」(博多弁を知らない人に注。博多では「行く」ことを「来る」とも言います。相手の立場に立った言い方なんですね)
 「ばってん、俺も4時くらいまでしか待てんぜ。お客さんもそのくらいで切れろうや」
 「なんね、お客さん、来よらんとね」
 「全然来よらん」

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12月31日(月)
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