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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■おたくはセールス電話、おおくありませんか?/DVD『スペースカウボーイ 特別編』ほか
8月も今日で終わり。
今年の夏は、ゆっくり休めたような休めなかったような。
でも気疲れ一つしないような生活を望むというのは現代人にとっては最高の贅沢だろう。現実には不可能な話だ。
そう言えば細野不二彦の『りざべーしょんプリーズ』に、忙しいホステスさんたちを、南の島で「何もさせないで」休ませるってのがあったなあ。でもそんな「楽園」を経験しちゃったら、現実に帰るのがイヤになっちゃわないだろうか。
私には、「南の島はこの世の楽園」とするような幻想は、全く興味を引くものではないのである。
尊敬する水木しげる御大がいかに「死ぬときは南の島で死にたい」と仰せられようと、一時期は熱狂的なファンであった原田知世が「ここが私の天国にいちばん近い島です」と言おうと(*^▽^*)、私の心に南洋への憧憬は生じない。
どんなに平和で悩みのない世界でも、活字と映画と漫画のない世界で暮らしたいとは思わないのだ。文明に毒された哀れな小人と思うなかれ。それがオタクの宿業なのである。
朝っぱらから父から電話。
昔、父の床屋で働いていた職人さんのお母さんが、健康食品の販売なんかをしているのだそうで、私が糖尿だと聞くと、「それはいけないわ、栄養が偏っているのよ、暴飲暴食しているに違いないわ、そのうち痩せ細ってガリガリになって血を吐いて死ぬのよ死ぬのよ死ぬのよ、そうならないためにはこの肝油を買うしかないわ、それしか生き延びる方法はないわ、きっとそうよ絶対そうよ、だから買ってね買ってね買ってね」と言って、その肝油とやらを置いていったそうである。
「すまんが、ヒマな時にでも店に寄って、もらって行ってくれんや」
「いらんわ」
なんだかなあ、知人やら、知人の知人やら、年に一度くらいはこういうセールスが舞い込んでくるのだが、この人たちは私との知り合い関係をやめたいのだろうか。それとも私のことを、いかにも騙されやすい世間知らずのお人好しのアホウの優柔不断の、ちょっとおだててやればすぐその気になって、なんぼでも買うたろか、店ごと持って来いやぁの、大バカ野郎のスカポンタンくらいに侮って売りつけようとしているのだろうか。
買わんて。
そんなことを考えていたら、更に電話のベルが鳴り、「瓦をお求めになりませんか?」
ウチはマンションじゃあ!
昨日に引き続いて『仮面の忍者赤影/金目教編』6、7話を見る。
前回までで霞谷七人衆のうち、悪童子、蟇法師、傀儡甚内は赤影たちと戦って破れている。
最後の、そして最強の七人衆として現れるのが夢堂一ツ目。
演じるは『蒲田行進曲』のヤスのモデルとしても有名な汐路章。甲賀幻妖斎の天津敏と並んで、もう一方の赤影の悪役俳優と言えるのがこの汐路さんなのだが、子供のころの私は、実はあまり汐路さんのことが好きではなかった。
というのが、汐路さんは第四部・魔風編で、頭領の魔風雷丸も演じていたのだが、これが実にひょうきんな役柄。悪の頭領のくせに部下の忍者たちに媚を売ったり、貫禄のないことったら。
悪役の真価とは、いかに貫禄と怖さを表現できるかにあると考えていた私には、汐路さんの演技はまるでオチャラケにしか見えなかったのである。
……ガキだったとは言え、不明の至り、といはこのことだ。
そのころの私は、一ツ目も、第三部の根来編での夕里彈正(モデルは松永久秀か)もまた汐路さんであることに気がつかなかったのだ。あのひょうきん演技は、天津敏や原健策との差別化を図るための計算に他ならなかった。チンピラヤクザから悪大名まで演じ分けられる汐路さんの演技力あっての役どころだったのである。
夢堂一ツ目は全四部を通じて、最も妖怪的な忍者である。
全身が緑色、死神の持つような鎌をブーメランのように投げ、片目を巨大化させてその目から光線を発するなど、既に人間の域を越えていると言っていい。原作の夢堂典膳が盲目のクール・ガイだったのとは天と地ほども違う。
これはやはり、赤影の製作者たちが山田風太郎のファンだったということなのではないだろうか。
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08月31日(金)
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