ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491769hit]
■ナニワの謎/『怪盗対名探偵 フランス・ミステリーの歴史』(松村喜雄)ほか
仕事が長引いて帰宅が遅れる。
あぶく銭が手に入ったので、久しぶりに女房を誘って外食でもするかと、餌を持って帰る親鳥の気分で帰ってきたのだが、なぜか部屋のどこにも女房の姿がない。
パソコンは点けっぱなし、前のテーブルには食べ掛けの焼肉が置きっぱなしになっている。
なんだかメアリー・セレスト号のような状況で、いったい何があったのかと、あたりを見まわすと、女房の携帯電話がない。もしかして待ちくたびれて一人で食事にでも行ったのかと、コールしてみると、女房はすぐに出た。
「なんだ、外、出てたのか?」
「うん、そうだよ」
「今どこだい?」
「ウチの近く。もうすぐ帰るとこ。……なんでいきなり電話してくるん?」
「いや、仕事がないなら食事にでも行こうかと思って……」
「なんで!? 貧乏やなかったん!?」
……確かに給料日前の生活は楽じゃないが、テメエの夫をホームレス寸前みたいな言い方するなよ。
帰宅した女房と、どこで食事したいか相談する。
女房は仕事があるのであまり遠出はできない。
「食事はね、ガストかロイヤルがいいの」
「どっちがいいんだよ。ちゃんと決めろよ」
「『超少女明日香』の2巻が出てるはずなんだよな。『積文館』にはなかったんだろ? じゃ、『ホンダ』に行こうか」
「じゃ、食事はロイヤルだね。デザート食べてもいい?」
「いいよ。先に本屋寄っていこう」
「うん、探したい本もあるし」
「何を探してんだ?」
「……秘密」
「なんで? はっきり言えよ」
「……『ナニワ金融道』」
「……なんでいきなり!?」
「こないだ『明日香』探しても見つからなかったから、代わりに1巻買ったの……」
よくわからないのは、女房がどうしてよりによって『ナニワ金融道』を選ばねばならなかったかということだが、理由は永遠の謎である。
本を買いこんで、ロイヤルホストでチキンカツを食べる。女房はハンバーグ。
食事中、女房は『笑点の謎』に読み耽り、私は『石ノ森章太郎キャラクター図鑑』2巻に没頭する。
……ウェイトレスさんは変なカップルだと思ったろうなあ。
女房は仕事があるので、本屋の前で別れて、私はもう一軒、馴染みの本屋を廻る。一気にン万円使っちまったが、これでも買う本絞っちゃいるのだ。
帰宅して風呂に入りながら本を読む。
松村喜雄『怪盗対名探偵 フランス・ミステリーの歴史』。
昭和61年度日本推理作家協会賞評論賞受賞作。600ページはある大著だが、面白くて一気に読んだ。
筆者は江戸川乱歩の従弟半にあたる。子供のころから乱歩の薫陶を受け、日本で出版されたミステリはことごとく読破し、飽き足らずに、海外ミステリを原書で読むためにフランス語を学んだというツワモノである。
……でも羨ましい環境だよなあ。偏見かもしれんが、これが清張だとミステリファンにはならないのではなかろうか。私も親戚に乱歩が一人ほしいぞ。
私もそれなりにミステリファンを自認してはいるので、ミステリの歴史については中島河太郎や九鬼紫郎、ハワード・ヘイクラフトの著作なんかで一通りお浚いはしている。だから羅列される海外のミステリ作家の名前で知らないものはない。
でも名前を知ってるということと、読んでるということは別だ。
……白状しよう。私はジョルジュ・シムノンのメグレ警部シリーズは『男の首』と『サン・フィアクル殺人事件』くらいしか読んでいないのである(あと短編を少々)。
S・A・ステーマンやボアロー&ナルスジャックは一冊も読んでない。ミステリファンが聞いたら、「えっ!? 『マネキン人形殺害事件』や『悪魔のような女』を読んでないの!?」とバカにされるのは必定だ。持ってはいるんだけど積ん読になってんだよねえ。……20年くらい前から(-_-;)。
[5]続きを読む
03月15日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る