ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491769hit]

■さて、勝ったのはどっち?/『HUNTER×HUNTER』11巻(冨樫義博)ほか
 ホワイトデーである(昔は「クッキーデー」とか「マシュマロデー」って呼び方もあったがすっかり消えたな。お菓子屋の陰謀だってことがこのことからもはっきりとわかるな)。

 期待してる人も、石投げつけたい人も、両方いるだろうからあらかじめ言っとく。
 今日はノロケるぞ。読みたくないやつぁ、さっさとご退場願おう。

 儀式だイベントだというのは所詮は欺瞞なのであまり好きではないのだが、かと言って、人の思いに背を向けたいというわけでもない。「お返し」はちゃんと用意してある。

 バレンタインデーの前に、「アンタ、欲しい?」と女房が聞いてきたが、これは「あげたい」という言葉の裏返しである。私も決して素直な人間ではないので、「くれるならもらうよ」とそっけなく答えたものだった。
 女房はどうも私とのコミュニケーションを一種の「勝負」だとみなしている向きがあるのだ。女房のアタマでは、自分の方からアプローチすること、即ち「負け」ということになるらしい。
 その辺の発想が私にはよく分らんのだが、なんとか私の方から「チョコ欲しいよう」と言わせようとしている時点でもう「負け」てるようなものだ。私は実際、女房がくれる気がないならもらいはしないし、仮にくれなかったからと言って別に気を悪くしたりするわけでもない。
 そういう執着のなさが女房には暖簾に腕押し、糠に釘で気に入らないんだろうが、それが私の自然なのだから仕方がない。逆に私が粘着質な性格で何かにつけ執着するタイプだったら、そのほうが女房は困ると思う。

 今日も女房が「私のこと、好き?」と聞いてくる。
 いつものことで私も「好きだ」なんて言ってやらない。「オレが浮気するとでも思ってるのか?」と言い返す。
 「今日は職場で私のこと考えてた?」
 「考えてたよ」
 「ほんと? 忙しいのに私のこと考えてられたの?」
 「いや、そんなヒマなかった」
 「……ウソついたの?!」
 「違うよ。お前のことは心の基本にあるんだ」
 「なんかウソっぽい……」
 「冷蔵庫にホワイトデーのブレゼントがあるよ。よしひとさんの分も買っといたけど、それもお前にやる」
 「なんで?」
 「よしひとさんには改めて別のを買うよ。古くなったのあげるわけにはいかないし」
 「私には古いの渡すんだ」
 「今はまだ買ったばかりじゃないか」
 「中身はなに?」
 「さあ。忘れた」
 冷蔵庫からお返しを持ってきて女房に渡す。女房、早速中を見て確かめる。包み紙を破り、箱のフタを開ける時の女房の目がランランと光る。いや、ホントにお菓子には眼がないのだ。
 クランチチョコミックスと抹茶ロールクッキー、そう言えばそんなの買ってたなあ、と今更ながらに思い出す。
 女房、そのまままたフタを閉めて引き出しの上に置く。
 「なんだ、食べないのか?」
 「すぐには食べないよ」
 あとの楽しみに取っておくということか。多分私が寝入ったあとで食べるつもりであろう。美味しそうに食べる様子を私に見られると「負け」になると思っているのだ。
 ……だからその時点でもう負けなんだってば。
 つくづく解りやすい性格してるやつだ。
 
 ……自分で書いてても思ったが、私は基本的にはタラシだな。親の血か。
 
 マンガ、冨樫義博『HUNTER×HUNTER』11巻読む。
 前巻の重大発表、子供が生まれたことと、アニメが3月で終わることだった。……引くほどの話題じゃないよなあ。
 明朗マンガのフリして始めておきながら、さすがは冨樫、期待を裏切ることなく、幻影旅団のあたりからまた『幽遊白書』の「仙水編」の時みたいにコワれ始めてきた。もう随分、テレビアニメ向きじゃなくなってきたなあ、と感じていたが、今巻15ページのノブナガや、154ページのクラピカのアップはすでに少年マンガのワクからはみ出した作者自身の狂気の顔になっている。

[5]続きを読む

03月14日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る