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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■なりたくて病気になってるわけじゃないやい/舞台『トランス'98』ほか
 喉をすっかりやられてしまって、咳が止まらない。なんでこんなにからだが弱いのだ、酒もタバコもやらんのに。体の丈夫なヤツはすぐ「根性が足りんのだ」と冷ややかな目で見るが、だったらテメエも根性で不老不死になって見せろと言いたい。
 ……いかんいかん、また心がすさんでいる。こういうとき女房の愛があればなあ。
 ああ、人間って、本気で辛いときには一番手に入らないものを求めるものなのだなあ(T_T)。

 栄養がつくものがほしいと思って、女房に買い物を頼むが、買って来たのはインスタントラーメンの山。だからわしゃ風邪引いてるんだってば。
 しかし女房はいつだって私が病気であることを信じないのである。熱を出そうがふらついていようがあふあふ言っていようが、演技だと思っているのである。
 「喉アメどこ?」と聞いても「知らん』の一言。
 ……まあねえ、そりゃ確かに具合が悪いと言いつつこうやってパソコンに向かってんだから仮病じゃねえかと疑われても仕方ないことではあるんだけどねえ、もう病気の時にはココロの方もちょびっとトチ狂ってるんだと思っていただきたい。
 実際、大人しくしてればいいのに、なぜ動いてしまうのか、私自身にも分らないのだ。ともかく心が全く落ち着かず、何かをしていないと気がすまない。アタマの中が言葉で溢れかえり、それをどこかに書きつけたくなる。……栗本薫のことを嗤えんなあ。
 じっとしているためには仕方ないからビデオを見たり本を読んだりするしかないのだ。

 そう言うわけで今日は黙々と一日中未見のビデオや本の整理をする。そんなホコリまみれの仕事してどうするんだ。それこそ体に悪いぞ。でも今日はハナから狂っているのでどうしようもない。咳き込みながら本の山を積み上げていく。
 その間女房はと言えば、家事もしようとせず、一人でわき目もふらずにテレビゲームをしている。夫が夫なら妻も妻だ。まともな神経なんか持っちゃいない。

 片付けの真っ最中に火災報知気の点検が回ってくる。とっ散らかってる部屋を見られるのは恥ずかしいが、私が偶然居合わせてよかった。女房一人だと、居留守を使っていたに違いないからだ。
 女房は人に見せられない格好をしていたので(どんなだ)、布団にくるまって隠れる。日頃から格好は家の中でも気にしろと言うのに聞かないのだ。そんな格好をしているおかげて、すぐに体を壊してしまうのだが(だからどんな格好なのだ)、自業自得というものであろう。

 『雨柳堂夢咄』6、7巻(波津彬子)、前巻はちょっと誉めすぎたかなあ、今巻でまた少し「作りもの」めいた作品が続いて、レベルダウン。ようやく青二郎と釉月が出会うが名乗りあうことはない。まあはっきり出会わせちゃうとこのシリーズ終わってしまうから当然の演出ではあるのだが、そこに多少のあざとさが見えるのである。
 人物を増やしすぎたのもマイナスになりつつある。何しろ人物の書き分けが非常に下手な人なので、アイデアが一つすべるととても読みにくいのである。もう先は見えちゃったし、この辺でケリをつけた方がいいかも。

 以前買ってまだ見ていなかったビデオ、鴻上尚史作『トランス'98』を見る。やはりビデオでオリジナルの『トランス』、生で最新の『トランス』と一応全ての『トランス』を見たことになるが、本作が一番つまらない。
 一見、精神病院を舞台にしているように見えるが、この脚本は実のところどこにもない世界を舞台にしている。主人公三人がそれぞれに心を病んでいるとすれば、そこに医者はいない。医者のいない精神病院はあり得ない。これはやはり『朝日のような夕日をつれて』以来、鴻上尚史が描き続けている現代人の心のユートピアを追い求めた作品と見るのが一番わかりやすい解釈だろう。

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02月16日(金)
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