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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■だから初心者なんだってば/『わが師はサタン』(天藤真)
 夕べ風呂に入り損ねて、ヒゲが伸び放題だったので、朝から風呂に入って顔を当たる。
 「ヒゲを剃る」「顔を当たる」とは言っても「顔を剃る」とは言わないと思っている人が多いと思う。でも実は床屋用語ではあれは「顔剃り」と言うのである。子供のころ「顔剃ったら血が出るやろ」と友達にからかわれたが、顔の表面を剃ってるのだから別に間違いでもなんでもない。突っ込んだつもりが突っ込み返されて、その友達は腹を立てていたが、そういう切り返しも覚悟しなければ一人前の芸人とは言えない。……って小学生に何要求してたんだろうな。

 宇和島水産高校の実習船が、浮上したアメリカの潜水艦に沈没させられた事件、体よく利用されて首相退陣のための口実にまで使われようとしているが、今日になって、同乗していた民間人が操縦に関与していたと報道。
 マスコミはいかにもその民間人の操縦ミスで事故が起こったかのごとく意識誘導をしようとしているが、そりゃ乗組員が操縦してたら事故が起こらなかったと言いたいわけかね。結局は「民間人に操縦させたことが悪い」で話を収めて、潜水艦の構造的欠陥から目を背けさせようってハラじゃないのか。
 潜望鏡は、ソナーはどうだったのかと言われてもいるようだが、私ゃ潜水艦に詳しいわけでもなんでもないが、映画なんかじゃたいてい水面の船や浮遊物を全く無視して浮上してるものな。
 単純な疑問なのだが、魚の群れと船の区別って、ソナーできちんと区別できるものなのか? 乗組員が仮に船影を確認出来ていたとしても、「どうせ魚だ」と見過ごしちまったんじゃないかという気がしてならん。
 しかし実を言うと、ニュースを聞いたとき私が真っ先に思ったのは「なんでそんなハワイくんだりまで行って実習せにゃならんのだ」ってことだったのだ。水産高校ったって全員が遠洋漁業に携わるわけじゃあるまいに、いったいそこでなければならない積極的な理由ってのはあったのだろうか。いや、別にそんなとこに行った学校の方が悪いと言いたいわけではないが、潜水艦が民間の水域に間違って浮上した、という報道は未だになされていないのだ。とすればそこはもともと危険区域だったのではなかったか。
 その辺の学校側の情報もアメリカ軍側の情報も全然伝わってこないのはなぜだ。情報が隠されてる状態で正確な判断なんぞ出来るわけがない。にもかかわらず「軍のせいで」とか「若い命が」とか、訳知り顔にコメントしてる連中が多いのがどうにもきな臭いのである。

 水産高校のホームページの掲示板、誹謗中傷の書き込みが増えて、閉鎖せざるを得なかったとか。そりゃ書きこんだヤツの方が人間的にどうのってのは確かにあるけれど、こういう公共機関ってのは掲示板を開くもんじゃないと思うんだがな。こういう事件がなくても、日頃からどんな「荒らし」をされるか分らんわけだし。メールだけを受けつけて、取捨選択して掲載すればいいのである。掲示板を開くのなら、何を書かれるかわからんということを覚悟をしておくのが前提だよな。

 天藤真『わが師はサタン』を読む。
 いやあ、書店でこのタイトルと作者名を見た瞬間、マジで飛びあがっちまったぜ。
 ミステリファンなら周知であろう、謎の女流作家、「鷹見緋紗子」の正体がついに判明したのである。『わが師はサタン』『闇からの狙撃者』ほか、昭和50年代に長編を矢継ぎ早に執筆し、一旦休筆したものの徳間書店のわずか4冊で廃刊になったミステリ専門雑誌『瑠珀(ルパン)』(未だに捨てられん)で復活するがその後すぐにまた沈黙した、あの鷹見緋紗子である。
 既成作家の覆面ペンネームであろうとは噂されていた。私は高木彬光氏かなあ、とちょっと疑い、それにしては文章がうまいと、首を捻っていたのである。高木氏が死んだ時、ああ、鷹見緋紗子の秘密は永遠に謎なのかと思っていたのだが、それ以前に鷹見嬢は亡くなっていたのか。
 正確に言えば「鷹見緋紗子」は天藤真・大谷羊太郎・草野唯雄三人の合同ペンネーム。天藤氏が担当したのは『わが師はサタン』『覆面レクイエム』の二編のみ。正体が分らなかったのも当然だろう、本作は天藤氏が得意としたユーモアミステリの要素が極力抑えられているのである。
 で、出来映えはどうだったかと言うと……。


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02月14日(水)
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