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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ミクシィ・デビュー!/映画『ブラザーズ・グリム』
もっとも、そう感じるのはこちらがモンティ・パイソン以来、ギリアム作品を殆ど見続けて来ているからで、今回初めてギリアム作品に出会った若い観客は、グロな描写と能天気なギャグとのギャップに呆気に取られてしまうかもしれない。ギリアム監督、来日記者会見では赤ずきんに扮した上戸彩に盛んにモーションをかけていたらしく、まあその無邪気っぷりは昔といささかも変わっていないのである。今回は題材がグリムなだけに、セオリーをあまり外すことができなかったものか。続編を暗示するラストもあくまで「定番」としての終わり方であって、必ずしも本当に続編を作るつもりはないように思う。
キャラクターも、主役の二人が無個性なのが頂けない。マット・デイモンは、当初、折れた付け鼻をする予定だったそうだが、プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが、「客は俳優の顔を見に来るのだ」と反対して止めさせたそうだ。ギリアムはそれでヘソを曲げたと言われる。『ゴジラ』の田中友幸も、沢口靖子について似たようなことを言って、『ゴジラ(1984)』や『ゴジラvsビオランテ』をあんなテイタラクにしてくれていたが、洋の東西を問わず、映画を勘違いしたプロデューサーはいくらでもいるものである。
主役が冴えない分、脇のキャラクターがかなり頑張ってくれてはいる。妖怪退治ものと来れば、「ねずみ男」キャラがどこかにいなければ収まらないものだが、今回その大任を担うのはカヴァルディ役のピーター・ストーメア。いささかはしゃぎすぎではあるが、いいところでグリム兄弟の足を引っ張ってくれるのである。
画面作りも、「ギリアムにしては」平凡で、せいぜい鏡の女王の塔を俯瞰して森を捉えたカットや、「罅割れた鏡」に映りこむ女王の眼の演出などに往年の才気を感じる程度である。と言っても、ギリアム監督作品がこれで終わりなるわけもない。次回作はギリアム風『オズの魔法使』か『不思議の国のアリス』と言われるミッチ・カリン原作の『Tideland』。今回の『ブラザーズ・グリム』はこれの露払いだったのかな。
11月04日(金)
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