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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■トラノアナ潜入記/舞台『弟の戦争 GULF(ガルフ)』
 「何ね婆さん、泥棒やら『ふるやのもり』に比べたら、なんちゃなかよ」
 天井裏に潜んでいた泥棒は、泥棒よりも恐ろしい「ふるやのもり」とは何なのだろうと驚く。
 そこに今度は狼がやってきて、爺さんと婆さんを食ってしまおうとする。
 「なあ爺さん、こげなえずか夜に狼の来よったら、どげんするとね」
 「何ね婆さん、狼やら『ふるやのもり』に比べたら、なんちゃなかよ」
 土間に上がりこんでいた狼は、狼よりも恐ろしい「ふるやのもり」とはどんな化け物だと驚く。
 嵐は激しくなり、稲光がピカッと光って、篠突く雨がザアッと音を立てて茅葺屋根に降り注いだ。
 爺さんと婆さんは、「ああ、『ふるやのもり』が来よったばい!」と叫ぶ。
 「ふるやのもり」がどこに来たのかと慌てた泥棒は、梁から狼の背中に落ちる。
 「ふるやのもり」が襲ってきたのかと慌てた狼は、飛び上がって外に逃げ出す。
 狼はしがみついた泥棒を振り払おうと嵐の中を必死に走るが、泥棒も振り落とされたら襲われると思って必死にしがみつく。一晩中走り回るうちに、泥棒もついに力尽きて狼から転げ落ち、狼もそのままフラフラとどこかへ行ってしまった。
 次の日の朝、泥棒は仲間の泥棒たちにこう言った。 
 「よう聞いときい、あの農家にはうっかり近づいたらいかんばい。『ふるやのもり』っちゅうて、もうえらい化け物の出よるけんね」
 次の日の朝、狼は仲間の狼たちにこう言った。
 「よう聞いときい、あの農家にはうっかり近づいたらいかんばい。『ふるやのもり』っちゅうて、もうえらい化け物の出よるけんね」
 そのころ爺さんと婆さんは、雨漏りですっかりびしょ濡れになった家中の畳を汗だくになって表に出していた。
 「ああ、これやけん、『古家の漏り』はえずかとよ」

 いくつか、結末が違うバージョンもあるようだが、基本形はこんな感じである。

08月25日(木)
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