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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■幻想の絆/DVD『盲獣VS一寸法師』
この映画の批評で、「昭和初期の設定のはずなのに、あちこちに現代のものが映りこんでいる」と批判していた人がいた。確かに低予算ゆえに「ありもの」で勝負するしかなかった弊害と言えばその通りなのであるが、そんなことは大した問題ではない。乱歩の小説は時代を映す鏡であったが、同時に普遍的な人間の心の闇を描いていた。時代がいつとも知れぬ混乱と違和感は、かえって乱歩らしいほどだ。
「盲獣と一寸法師が戦っていないじゃないか」という批判も全くの見当違いである。これは物理的な戦いではなく、狂気と狂気の精神的な戦いなのだから。
この映画に関しては、本質を見ずに瑣末的な印象批評だけが横行し過ぎていたように思う。
2001年には完成していた本作が劇場公開されたのはようやく昨年。その間、3年の月日が経っている。日本人が、乱歩の描いた「人間の本質としての変態性」を本当に受け入れられるだけの「健全さ」を持ち合わせていたなら、劇場公開も速やかに行われたであろうし、あと一本くらいは石井監督が映画を撮ることも可能だったように思えてならないのである。
奇しくも石井監督の「異常性愛」シリーズが続けてDVD化されることになった。劇場公開時、私は小学校低学年で、当然リアルタイムでは見られなかった。若い人には刺激が強すぎるだろうからあまり勧められはしないが、少なくとも「こういう世界」が自分よりも遠いところにあるとは思わない方がいい。嗜虐は全ての人間の原初的な嗜好として、必ず意識の底に偏在しているものだからである。
08月18日(木)
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