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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■あのここな無知蒙昧な糞ったれどもめが(怒)/『空中ブランコ』(奥田英朗)
ちゃらんぽらんに見えてもそれはカモフラージュで実は伊良部は名医、という設定になっていないところが面白くはある。ともかくその場の思いつきでと言うか、自分の本能の赴くままにと言うか、殆ど無茶な「逆療法」ばかりやらかしているのだが、それが結果的には功を奏するのだから、「もしかしたら伊良部って名医なのかも」と読者に錯覚させるところが小説として上手いのである。もちろん、患者に意味もなくビタミン注射をするのが趣味なんて変態が名医のはずはないんだけどね。これはミステリーで言えばジョイス・ポーターの『ドーヴァー警部』シリーズで開発されている手だ。病気の治癒、事件の解決、これどちらもあくまでただの「偶然」で「好運」なのね。これでクビにならないんだから、いくら伊良部が総合病院の跡取り息子だからと言っても、すげえラッキーマンだわ。
「毎回同じ話」だから、そのマンネリを楽しむか、飽きるかで、このシリーズの評価は分かれると思う。直木賞は珍しくもその「マンネリ」の部分を評価したのかも。まとめて読むとやはり飽きる可能性の方が高かろうから、少し間を置きながら各短編を読んでいくのがいいんじゃないかな。
伊良部一郎のキャラクターはドラマの阿部寛とも映画の松尾スズキとも似ていないけれども(だって原作の伊良部、デブなんだもん)、どちらかと言えば松尾スズキの方がまだ近い。確かに伊良部は変態だけれども、どこか稚気があって憎めないのに、阿部寛はまんま変態みたいな演技(『トリック』と全く同じである)してたもんなあ。再ドラマ化されるなら、伊集院光に演じてほしいな(笑)。
07月27日(水)
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