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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ムダじゃムダじゃ/『フラッシュ! 奇面組』2巻(新沢基栄)/『ぼくんち 全』(西原理恵子)/『ねらわれた学園』(眉村卓)
その女の子が『ねらわれた学園』を読んでいるだろうと私は目星を付けていた(別に図書カードとかをチェックしていたわけではないぞ。当時の「本好き」の子なら、たいていは文庫になったばかりのこの本を読んでいたのである)。予測は違わず、私の思惑はちゃんとその子に伝わったのである。そのときの彼女の微笑は忘れられない思い出になった。中学生に腹芸なんてできないだろうと考えるのは大間違いなのである。
私たちの「計略」は効を奏して(会議の内容は生徒に全部公開されている)、我々が生徒会をしていたころの母校は、その前後の年に比べると風紀の乱れは随分と抑えられるようになった。その子は知的で、けれど勉強ができるのを鼻にかけたようなところはなく、相当な美人でもあったので、「あの子が頑張ってるならちっとはマジメにするか」という気分になった男子生徒も多かったようだ。
私は私で、この件をきっかけにその女の子ともちょっとだけ親密になることができた(本の話をするようになっただけである。誤解なきように)。全く中学生のナンパというのは可愛いものである(^_^;)。
話が横に逸れたが(^o^)、今回の新版、新たに作者眉村卓の前書きが付け加えられ、挿絵を『ブギーポップ』シリーズの緒形剛志が担当している。
眉村氏は「主人公と反対側の敵対者とか、直接かかわりがなさそうな人物の身になって、そうした目から見ればどうなるか、という読み方もしてほしい」と書いている。「敵対者」は高見沢みちろや京極少年のことを指しているし、「直接かかわりがなさそうな人物」とは耕児の父親などだろう。中学生のころには気が着かなかったが、読み返してみると耕児以上にみちるや京極、耕児の父を描く眉村さんの筆致に熱いものが感じられる。
「お前たちの戦いは、一時に高まった闘志によって盛りあがった、言わば短期的なものにすぎない」
これは全ての戦いが終わったあとに父が耕児に語った言葉だが、こんなに「重い」とは中学生の時には気がつかなかったな。現代の「オトナの」運動家たちもこのセリフの意味をちょっと考えてみたらいいように思うが。
緒形さんのイラストは、もう高見沢みちると楠本和美の魅力を満喫するに尽きる(京極さんもちゃんと楽しめます。女の子たち向けに念のため)。みちるはもうまんまマンティコアなんだが、一見ごく普通の正義漢に見える和美の「予感よ。私の、ただの予感」というセリフのシーンをちゃんとイラスト化してくれているのがスバラシイ。女はどんなにフツーに見えてもやはり魔物である(^o^)。
それから「阿倍野」という地名で今回初めて気がついたんだが、これ、大阪での事件だったんだね(眉村さんは大阪出身)。共通語で書かれてはいるけど、これは「翻訳」されたものなんだろう(^o^)。ということは、みんなホントは大阪弁で言いあってたわけだ。
和美は実は「予感や。ウチの、ただの予感」とか言ってたワケやね。高見沢みちるだけは大阪にいても共通語使ってそうだけど。今度ドラマ化するなら、原作通り大阪を舞台にして作ってみたらどうだろうか。
講談社のジュブナイルは、更に8月から書き下ろしシリーズの「ミステリーランド」を創刊するようだ。第1回配本として、小野不由美『くらのかみ』、殊能将之『子どもの王様』、島田荘司『透明人間の納屋』が広告されている。
ミステリー、SFの最先端はもしかしたらこうしたジュブナイルから生まれてくるかもしれない。
07月25日(金)
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