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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■親しき仲ほど礼儀なし/『風の帰る場所』(宮崎駿)/『うっちゃれ五所瓦』1・2巻(なかいま強)ほか
もともと私はスポーツマンガはあまり読まず(っつーか梶原一騎嫌いだったのだが)、例外的に『野球狂の詩』とか、『1、2の三四郎』、『すすめ、パイレーツ!』などを、これ、スポーツマンガじゃないよな、とか思いながら読んでたのである。『五所瓦』は完璧な相撲マンガだった(と思っていた)ので、まるで興味を抱かなかった。不明と言えばこれほど不明なこともない。
あちこち、ちばてつや・ちばあきおの諸作や『1・2の三四郎』の影響を受けているのはわかるけれども(ちばさんとこでアシストしてたんだから当然だろうが)、ギャグで間を繋ぎながらシリアスな展開に持ちこんで感動を作り出す技術は『わたるがぴゅん!』で経験を積んで、本作で結実した印象だ。
廃部寸前の武蔵山高校相撲部に残った、たった一人の部員、五所瓦角は、実は全国でも有数の実力の持ち主。運悪く高校チャンピオンの黒島高校の田門に毎回初戦でぶち当たって敗退しているために、世間的には未だにその実力を評価されてはいない。
高校最後の大会、ぜひとも「団体戦優勝」を目指す五所瓦は、柔道部主将の清川薫を部員にと勧誘するがケンもホロロに断られる(当たり前である)。しかし、五所瓦の男気に打たれた清川は、五所瓦に柔道対相撲の勝負を挑む。自分が敗れれば、相撲部に入ることを条件として。勝負は五所瓦のぶちかましに押されながらも起死回生の一本背負いを仕掛けた清川の勝利で決まるが、清川はその前にこれが土俵の上でなら自分が押し出しで負けていたことを認め、部員となることを決意する。
五所瓦と清川の熱意に打たれて、次々と部員が集まるが、使えるのはレスリング部のハミダシ者、関内孝之のみ。あとはノリだけはいいもののただのヒキョー者の難野一平とただのデブの雷電五郎。五人のうち三人が勝てば勝利できるとはいうものの、無敗を誇る黒島高校相手に果たして勝機はあるのか?
展開がいやに映画『シコふんじゃった』に似ているが、アレは1992年、本作は1988年。パクったな周防正行(^^)。
五所瓦は実直過ぎるほど実直、しかもドモリで、少年マンガの主人公として考えるとあまりにも華がない。今だったらサベツ問題にも引っかかるし、こういう主人公は編集者からボツを食らわせられるかもしれない。しかし、スルメが噛めば噛むほど味があるように(^o^)、この地味なキャラが巻を追うに連れ、なぜか見栄えがしてくるのである。
もちろん、脇を締めるキャラクターがいてこそ主役は映える。ギャグメーカーとして、挑発、けたぐり、塩で相手の足を滑らせるなど、ズル手を駆使する難野のキャラは、ルーツは『おれは鉄兵』あたりにあるとしても、個性的なキャラ揃いの本作の中でも特に光っている。もちろんそれで勝てるわけもなくメンバーの足を引っ張りまくっているのだが、それでも次にどんなワザを披露してくれるかと読んでるほうは期待してしまうのだ。普通、物語がシリアスに展開していくと、こういうキャラは後ろに回されていくのだが、難野は最後の最後までドラマに絡んでくる。そこがなかいまさんがキャラを大事にしていることの証明だろう。
少年マンガの「王道」ってのは、こういう作品を指して言ってもらいたいものだ。
07月26日(金)
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