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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■能古島紀行/『ワイド版 風雲児たち』1・2巻(みなもと太郎)
……まあ、ホントにそれだけってわけでもなかったと思うけれど、語り口は実に面白い。『ホモホモ7』でしかみなもと太郎を知らなかった私には(マンガ家として『レ・ミゼラブル』その他の世界名作ギャグを描き続けていたことすら知らなかった)、このような一本筋の通った歴史観で、しかもギャグマンガを成立させられるだけの力量をこのマンガ家さんが持っていたことにまったく不明であった。全くマンガの世界は広いよねえ。
その後も『風雲児たち』の爆走は続く。幕末を描く、と言いつつ、時間の省略はしつつも、その幕末に至るまでの伏線となる出来事を丹念過ぎるくらいに描き、黒船来航に至るまでほぼ30巻を費やす。もと出版社の潮出版が「長過ぎる!」と激怒したのも分ろうというものだ。しかし、途中省略された部分も含めてもっと巻数をかけてくれてもいい、と考えていたのは私だけではないはずだ。
なぜなら、それだけ魅力的な人物を、キメの大ゴマを多用して、見事にうねりを持ったドラマとして描ききっていたからだ。
前野良沢(蘭化)、杉田玄白、平賀源内、司馬江漢、林子平、高山彦九郎、ベニョブスキー、田沼意次、田沼意知、大黒屋光太夫、最上徳内、伊能忠敬、高野長英、渡辺崋山、江川太郎左衛門、近藤重蔵、間宮林蔵、遠山金四郎、大塩平八郎、シーボルト、オランダお稲らの事績をただの解説に留まらない分量で描いていく。恥を晒すようだが、私ゃこのマンガで初めてベニョブスキーというトンデモナくオモロいおっさんを知ったぞ。その日本紀行のデタラメぶりったら(チラッとしか日本にゃ寄ってないのに大ドラマをでっち上げるのだ)、ジェームズ・クラベルの『将軍』なんか目じゃないがね。
そしてついに坂本竜馬たちが活躍する『雲竜奔馬』編に突入したと思ったら、数年で、掲載誌の『トムプラス』が休刊。
続きが出るのを待ったよ待ったよ待ったんだよ、ホントに。
ああ、でも読みかえしてもやっぱり面白い。天皇家を「身分証明書発行所」と言いきってるところも、周知の事実でありながら歴史家があいまいにしたまま言及しようとしなかったことをズバッと処断してくれているようで、実に小気味がいい。
今まで未読の方は幸いである。これから毎月、確実に面白いと言えるマンガが読めるのだ。もう5、6巻まで出てるみたいだけど、さすが『ゴルゴ13』以外何を出版してるんだのリイド社(^_^;)、全然本屋で見かけないぞ。注文してでも買いなさい。
06月29日(土)
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