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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■いつのまにかの240000ヒット/舞台『ブラックコメディ』(劇団四季)
一番どうしようもないな、と感じたのは、階上にいるクレアが、階下の男たちに次々に水を浴びせていくシーンである。これが実に正確で、目が見えていて目標を捉えているとしか思えない。実際に役者はちらちらと階下を覗いていた。これを、声の聞こえている位置で判断しているのだろうと解釈するのは好意的に過ぎる。ここは正確に頭に注げなくても構わないから、水は適当に振りまいてみせるのが「リアル」というものである。一事が万事この調子で、少しも舞台に説得力が生まれない。
「闇の中の練習をしていない」あるいは「おざなりな演技をしている」と確信をもって言えるのは、こういう「手抜き」がはっきりと見えるからだ。
いつもながらの「四季喋り」も、セリフのテンポを遅らせるばかりでキャラクターの個性を殺いでおり、この戯曲にはふさわしくないとしか言えない。
これだけ面白い芝居なんだからねー、四季にやらせるんじゃなくて、PARCOプロデュースでもいいから、ちゃんとした役者を集めて、もっと面白い芝居にしてほしいよ。四季もさー、自分とこに合わないと分かってる芝居なら、版権は取らないくらいの理性は働かせてほしいものだ。
ちなみに、1966年の本国イギリスでの初演のデータは以下の通り。
Black Comedy
Chichester Festival Theatre, then Old Vic Theatre, then Queen’s Theatre,London, 1966.
Directer:John Dexter(ジョン・デクスター)/Designer:Alan Tagg(アラン・タグ)
cast
Brindsley Miller:Derek Jacobi(デレク・ジャコビ)/Carol Melkett:Louise Purnell(ルイーズ・パーネル)/Miss Furnival:Doris Hare(ドリス・ヘア)/Colonel Melkett:Graham Crowden(グレアム・クラウデン)/Harold Corringe:Albert Finney(アルバート・フィニー)/Schuppanzigh:Paul Curran(ポール・カラン)/Clea:Maggie Smith(マギー・スミス)/Georg Bamberger:Michael Byrne(マイケル・バーン)
当時のスチールを見てみたが、それだけで演技のレベルが格段に違うことが見てとれる。
これだけの名優が演じた舞台を再演するのはかなり勇気の要ることである。よくぞやったものだと感心してさしあげられればよいのだが、四季の場合、これが名作への「挑戦」ではなくて、ただの「増長」としか言えないのが残念なところだ。それは、出来上がった舞台が如実に語っていることなのである。
02月09日(金)
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