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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■17万ヒット!/映画『キング・コング』&『乱歩地獄』
 乱歩はともかく熱狂的なファンが多いから、映画作家としては映像化の意欲を掻き立てられる気持ちは分かるのだが、思い入れが強すぎて抑制が効かなくなると言うか、「やり過ぎて」しまうことが多々あるのである。まあその「やり過ぎ」が石井輝男の『恐怖奇形人間』のレベルにまで行っちゃえばギャグというかその稚気に微笑ましさすら感じてしまうことになるのだが、この映画のように「気取って」しまうと、どうにも鼻に付くばかりなのである。

『火星の運河』(監督竹内スグル)
 原作が乱歩の夢想を綴った散文詩みたいなものだから、映画もイメージビデオみたいなものである。男(浅野忠信)が荒野をさまよって小さな沼を見つけ、そこを覗きこんだら、自分がかつて陵辱した女(shan)になっていたというだけのお話。他愛ないと言えば他愛ないのだが、殆ど音のない無声映画に近い作りが面白かったし、何より5分少々と短いので、あまり腹も立たないうちに終わったというか。でも初手から「これのどこが乱歩?」という雰囲気は既に漂っていたのである。

『鏡地獄』(脚本薩川昭夫/監督実相寺昭雄)
 『屋根裏の散歩者』『D坂の殺人事件』に続く脚本・監督コンビなので、原作を大胆に脚色した本格ミステリー仕立てにし、内容的にも犯人の美少年・齋透(成宮寛貴)によりスポットライトの当たったシリーズ第三作の雰囲気を前面に打ち出している。原作には登場しない明智小五郎(浅野忠信)と小林少年(中村友也)が狂言回しになるのは前作を踏襲しているわけだが、それならこの二人も嶋田久作と三輪ひとみコンビでやってもらいたかったところである。ロンゲの明智って、あんたねえ。
 殺人トリックに、マイクロ波を放射するサラジウムを表面に施した鏡を使う、というのは乱歩というよりも海野十三っぽいが、これはどちらかというと実相寺監督の『怪奇大作戦/京都買います』の仏像消失トリック(カドミウム光線)にオマージュを捧げたものかもしれない。本格ミステリー仕立てとは言ったが、もちろんこんなトリックは現実にはあり得ないので、事件の解明などに主眼は置かれていず、無意味なくらいに随所に置かれている鏡の映像に、『市民ケーン』のような映像美を見出すのみである。映画としては4本中一番マトモな作りになってはいるが、犯人の透をナルシストにしてしまったおかげで、原作の鏡にとり憑かれた男の妄執はさほど伝わってこない。一応、例の「球体」は出てくるんだけど、扱い薄いんだ。浪越警部役の寺田農に部下の刑事役の堀内正美は、実相寺作品常連組で、今回もいい味を出している。

『芋虫』(脚本夢野史郎/監督佐藤寿保)
 なぜかこれも明智小五郎ものに改作。けれど小林少年は『ピストルオペラ』『誰も知らない』の美少女韓英恵に変更。つか、髪が長いままだし、てっきり文代かマユミかと思ったよ。
 お話はもう、なんだかなあという出来で、原作での芋虫こと須永中尉(大森南朋)とその妻・時子(岡元夕紀子)の関係だけはあるものの、二人のセックスシーンを怪人二十面相(松田龍平)が「屋根裏の散歩者」になって覗いているし、切断された須永の手の指がホルマリン漬けになったままぴくぴく動くのは『指』からのイタダキだし、二十面相の本名が「平井太郎」ってのは江戸川乱歩の本名だし(原作の二十面相には「遠藤平吉」という本名がちゃんとある)、二十面相の師匠が「菰田」ってのは『パノラマ島奇談』だしで、適当に乱歩の原作を繋げ合わせて、それでいてただ鬱陶しいばかりで石井輝男のようなキッチュな面白さは微塵も生まれてこない。乱歩の映像化で「これやっちゃ失敗するよな」ってのを全部やらかしちゃった印象である。監督の佐藤寿保って人、以前『藪の中』で、犯される真砂になぜか騎乗位やらせたヘンな人だからなあ。なんかまあ、いろいろやりたかったんでしょうねえ。

『蟲』(脚本・監督カネコアツシ)
 なんかもう、書くのも辛くなってきましたが(笑)。

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01月01日(日)
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