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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ミクシィ・デビュー!/映画『ブラザーズ・グリム』
 伯父はもともと優しげな顔立ちをしているのだが、写真に写っている伯父は、苦虫を潰したような、実につまらなそうな表情をしている。受勲を喜んでいる様子が少しもない。もちろん、全く喜んでいないからなのだが、これはカメラマンも困ってしまったのではなかろうか。
 帰宅したら父から今度の法事について電話があったので、「写真見たよ」と話をしたのだが、肝心の勲章が映っていなかったのはどうしてか聞いてみると、「まだ送られてきていない」ということだそうだ。これで「宮内庁まで取りにこい」とか言われた日には、また伯父は辞退するんじゃないかと思うが、連絡一つないとは、こういう仰々しいことであっても、お役所仕事はお役所仕事であることだ。


 夜、ダイヤモンドシティ福岡ルクルまで、映画『ブラザーズ・グリム』を見に行く。
 普通、「グリム兄弟」と言えば「グリム・ブラザーズ」と並べるのが普通だろうが、これをあえて逆にしているのがミソ。「チーム・アメリカ」と同じノリなわけだ。
 「グリム兄弟は実はゴースト・バスターズだった」、というテリー・ギリアム監督の発想が既にマトモではない。本来なら、ドイツを舞台にした物語で登場人物が英語を喋っているというアメリカ中心主義的な映画には反発しか覚えないのだが(ちょうど『SAYURI』の予告編が流れていたが、これがやっぱりすごくデタラメっぽいのである)、今回はデタラメファンタジーが目的だから、フランス訛りの英語だってドイツ訛りの英語だって全然問題なし。
 そもそもモンティ・パイソン・チームは、テレビシリーズでもフランス人に扮してその言葉をバカにするスケッチをたくさん作っていたし、エリック・アイドル主演の『ナンズ・オン・ザ・ラン』では、どう見てもイギリス人なアイドルが、自分がインド人だと思い込んでいたというムリヤリギャグだってやっていた。だから、どう見てもアメリカ人なマット・デイモンがドイツ人でも構わないし、弟を「ジェイク!」と呼んでも、「そうかあ、『ヤーコブ・グリム』は英語だと『ジェイク・グリム』になるのかあ」と感心すらしてしまうのである(ヴィルヘルム・グリムは当然、ウィル・グリムね)。

 ドイツ各地の民話を収集する傍ら、各地で跳梁跋扈する魔物、妖怪、化け物を退治して歩く、賞金稼ぎのグリム兄弟(マット・デイモン&ヒース・レジャー)。ところが魔物たちは予め兄弟が仕込んでおいた人形や仲間で、全ては金儲けのためのペテンだったのだ。村人たちには感謝され、女にはモテまくり、すっかり有頂天の兄弟だったが、彼らには子供のころに詐欺に合って、愛しい病身の妹を薬が買えずになくしてしまったという悲しい過去があった。
 しかし彼らのイカサマもついに将軍ドゥラトンブ(ジョナサン・プライス)にバレ、拷問好きの部下・カヴァルディ(ピーター・ストーメア)に逮捕されてしまう。兄弟は、命を救う代わりに、マルバデンの村で起きている少女連続失踪事件の解明を命じられる。てっきり自分たちと同じく、イカサマ野郎の仕業だろうとタカを括っていた兄弟だったが、村の猟師の娘、アンジェリカ(レナ・ヘディ)に案内されて森へと足を踏み入れた兄弟は、歩く大木や狼に襲われる。そこは、鏡の女王(モニカ・ベルッチ)が支配する、本物の魔の森だったのだ……!

 グリム童話のキャラクターたち、赤ずきんやヘンゼルとグレーテルが登場して魔物に襲われたり、カエルの王様にウィル・グリムがキスしたり、悪趣味な描写はあちこちにあるのだが、総じて見るとストーリーはそれほど捻りのない、ごく普通の「妖怪退治もの」であって、テリー・ギリアムにしては独が少ないなあ、これじゃティム・バートン並みだなあという印象である。

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11月04日(金)
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