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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■おしまいはおしまい/DVD『ベルヴィル・ランデブー/老婦人とハト』
そう言えば、広島アニメーション・フェスティバルで本作が上映されたときに、質疑応答の時間にショメ監督に向かって「私もジャンゴ・ラインハルトが大好きなんです!」と上気して質問に立っていたお客さんがいらっしゃったことを思い出した。ショメ監督は「同志がいて嬉しい」とばかりにニコニコして、「ジャンゴ・ラインハルト、そしてジャック・タチはぼくの心の師匠です」といった趣旨のことを話されていたが、その言葉の意味も今回ようやくDVDを購入して合点がいったのである。
DVDを買う喜びは特典映像にあるが(映画のネット配信が普及してもここまでのサービスはできまい)、まず面白かったのはショメ監督と高畑勲監督との対談である。ショメ監督は、ディズニーなどの資金をかけて時間もかけて作った大作がかえって空疎な内容の作品ばかりになっていることを指摘して、逆に日本のアニメーションが時間も資金も制約を受けていることでかえって豊穣な作品を作り得ているのではないかと、実に見事な分析をしてくれているのだ。
これに対して高畑監督が苦笑いをしていたのが可笑しい。なんたって、その「時間も資金も制約がある中でアニメを作る」方式を成功させたのは高畑監督のいた東映動画ではなく、そのライバルたる手塚治虫率いる虫プロだったのだから。ショメ監督はそういう日本の事情を知らず、感じたままのことを口にしただけなのだろうが、偶然にも手塚治虫の功績を世界に通じる技術として賞賛した格好になった。手塚嫌いで宮崎信者のアニメファンの方、あまり自説に拘り過ぎない方がよろしいと思いますよ。
私も手塚アニメと宮崎アニメのどっちが好きかと言われたら、実はやっぱり宮崎アニメ派なのである。東映動画の昔から大ファンではあったが、だからと言って、手塚さんの功績を宮崎駿が口汚くののしるほどに全否定はしていないのだ。『Zガンダム 星を継ぐ者』の感想のときにも書いたが、テレビアニメを見て育った我々は、等しく「テヅカの子ら」であるのだ。
もう一つ、DVDの嬉しい特典は、ショメ監督のデビュー作、『老婦人とハト』も収録されていることである。これももう7年ほど前に広島アニフェスで見たっきりで、世界のアニメーションに関心の低い日本の現状では、二度と見ることはかなわないだろうと思っていた。基本的にはハートウォームな『ベルヴィル』に対して、こちらは徹頭徹尾ナンセンス&ブラックなホラー・コメディーである。
腹をすかした警官が、ある老婦人が公園でハトに豪勢なエサを撒いているのを見て、「ハトに変装して食事を恵んでもらう」ことを思いつく。普通ならこんなアホな計画、成功するはずがないのだが、それがなんとうまいこといっちゃうのだね。けれどそこには裏があって……。というストーリー。
この物語がどれだけブラックかというと、警官がハトに変装するためにハトの羽根を毟って被りものを作るのだが、哀れ裸ん坊になっちゃったハトがどうなったかというと……。いや、とてもグロくて言えねえ(苦笑)。ジブリも本当はこういうブラックなアニメが作れなきゃ、世界に通用するアニメスタジオとは言えないんだけどなあ。
08月09日(火)
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