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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■すれ違う言葉/『不死身探偵オルロック 完全版』(G=ヒコロウ)
佐藤 允→『独立愚連隊』(1959)
小林桂樹→『江分利満氏の優雅な生活』(1963)
寺田 農→『赤毛』(1969)
大谷直子→『肉弾』(1968)
本田博太郎→『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(1979)
真田広之→『EAST MEATS WEST』(1995)
マンガ、G=ヒコロウ『不死身探偵オルロック 完全版』(エンターブレイン)。
以前、ブロスコミックスとして刊行されたものの完全版。てゆーか、2巻が出るほど連載が続かなかったので、もう一回まとめて出しなおしました、という事情なので、何かのトラブルで全編収録できなかったのを完全版として出したということではない。たまにこういうことあるよね。前の単行本買ってる人間にとっては二度買いしなきゃならないから困るけど。
だからまあ、マイナーな作家さんだというか、売れてないといえば売れてない人なのだが、単行本を出してもらえたという点ではカルトな人気を誇っているのである。しかしカルトであるということはカルトになるだけの理由もあるので、まず驚くのはその個性的な“濃い”絵柄だろう。
マンガ家としての画力はすごくある。基本的にアニメチックで売れセンの絵柄も描ける人なのに、どうやらそれでは飽き足らないようで、やたらそれを“崩し”まくる。ブラックなギャグを矢継ぎ早に繰り出すとき、キャラクターの目は血走り口は裂け牙は生える。ひとコマにぶちこまれた情報は、濃過ぎてしばしば話の流れを停滞させるが、そんなことは気にもしていない。ともかく「描きたいことを描く!」というエネルギーに満ち満ちている。
例えば13話でリカがオルロックをぶち殺す(ゾンビだから死なないが)カットでは、撃った瞬間の「ズガゥーン!」という擬音、そして「ポピーン」と飛び出す薬莢、弾は正確にオルロックの心臓を貫いて、その弾の刺さった心臓が飛び出す様子までを全て描き(よく見るとリカは銃声が聞こえないように左耳に指を突っ込んでいる)、更に背景にはアシスタントのアンデッタと人斬り108号が驚いている遠景まで描きこんでおり、そこにリカの「ハートブレイクショット!!!」という絶叫とオルロックの「オモイデポロポロ!!?」という悲鳴がかぶるのである。立ったひとコマにこれだけ時間と空間を圧縮しているのは半端ではない。もちろん全てのコマがここまで濃いわけではなくて、ところどころに気の抜けたようなコマも点在しているのだが、これがギャグに緩急を作り出している。多少読みにくさはあってもギャグが滑っていないのは、この緩急の間のおかげだ。
この詰め込みギャグやコマの構成の仕方は誰かに似ているなあと思っていたが、鴨川つばめの『マカロニほうれん荘』そっくりなのだということにようやく気がついた(前読んだときには気がつかなかったような気がする)。ひとコマの中にギャグのボケとツッコミを同時にぶち込み、そのギャグを更にエスカレートさせて状況を破壊しまくり、怒涛のようなテンポアップを図っていくが、それが突然風船の中の空気が抜けたようにしぼんでいき収束する「間」の取り方、これが「マカロニ」絶頂時にそっくりなのである。作品を見る限り、作者は相当なマンガ好きだろうが、鴨川つばめがそのベースの一つになっているだろうことはまず間違いないと思う。
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05月02日(月)
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