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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■カリスマヒロインは生まれるか?(追加アリ)/『PLUTO(プルートウ) 02』豪華版
 で、結局、藤田とサラの二人の関係がどうなったかというと、「実はまだギャラリーフェイクは続いているのです」で、何の変化もないのであった。何じゃそりゃ。連載開始年月日を考えればサラだってもう30歳を過ぎてるだろう、いい加減、結婚しろよ、エッチがタブーな少年マンガじゃあるまいし、と思っていたら、作中に「あの戦火から5年」なんて台詞が出てきた。つまり二人が出会った1991年の「傷ついた『ひまわり』」事件から実は数年しか経っていないということなのである。歴史的な事件も何度も扱ってるから、作中の時制が21世紀になってないはずはないんだけど、そこはもう、あまり突っ込まないように、ということなんだろう。このラストはもしかして何年か経ったときに「特別完結編」とか出すための伏線かなあとも思うのである。
 9話にわたるラスト・エピソードよりも、私は「生キタ、カイタ」で、夭折した天才画家にして詩人、探偵作家である村山槐多(むらやま・かいた)を取り上げてくれたのが嬉しかった。マンガの中でも紹介されているが、槐多の絵はまさしく情熱のほとばしるままに描かれており、「汗だくのリビドーにまみれている」のである。
 「槐多の絵に触れた人間はなぜか魅入られる」の言葉どおり、高校時代に槐多にハマった私は、部活の会誌に稚拙な「村山槐多論」まで書いてしまった。まさしく「若気の至り」である。
 マンガでは紹介されていなかったが、合掌し放尿する僧侶の絵などは、自制できない情念のほとばしりをストレートすぎるほどに描いていて、この絵も私は大好きだ。槐多が描いた僧侶の陰茎は中途半端に勃起してさえいるのである。
 全集が絶版になって久しかったが、「美少年サライノの首」「悪魔の舌」「魔童子伝」「魔猿伝」「殺人行者」など、その代表作は、『村山槐多 耽美怪奇全集』(学研M文庫)として一昨年再版された。近年のふにゃふにゃなボーイズラブ小説に飽き足らない方には、槐多のねっとりとした耽美を一度味わっていただきたいものである。
 槐多の詩や小説を偏愛し、彼同様、「美少年趣味」であった江戸川乱歩の書斎には、生前、槐多の『二少年図』が飾られていた。今、その絵は世田谷文学館に寄贈されているそうである。

04月28日(木)
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