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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■だから鬱になってるヨユーなんてないんだって/『鋼の錬金術師 シナリオブック vol.1』
なんかすごくアタリマエなことを書くのは気が引けるのだが、サインって、憧れの人のものをほしがるものじゃないのか? たとえ有名人であっても、別にファンでもなんでもない人のサインをもらって嬉しいのか? シティボーイズのギャグで「海老名みどりをおっかけてどうする」ってのがあったけど、「有名人ならそれでいい」っていう態度、例えば「宅間守のサインが欲しい」ってのと同レベルで「島本和彦のサインが欲しい」と言ってるのに等しいんだぞ(ここで「宅間守のサインなら欲しいよ」とか突っ込む人、アンタは帰れ)。
昨年だったか、私は天神で、歌手の白井貴子のサイン会に偶然出くわしたことがあった。実は私は、学生のころ、彼女のコンサートに一回だけ行ったことがある程度のファンではあった(^.^)。すんごい小さい方なのだけれども、いつでも可憐でパワフルで、今でも好きなことは好きなのだ。けれども、最近はCDも買っていないので、これで「ファンでござい」とサインの行列に並ぶのはあまりにも失礼だと思った。たとえあちらにファンかそうでないか気が付かれないとしても、サイン欲しさに「フリ」をするような下劣なまねはしたくない。別にカッコつけでも何でもなく、自然にそう思うのだ。結局私は、白井さんのトークをちょっと聞いただけでその場を離れた。
『逆境ナイン』のコミックス、とうに絶版になっている(つか、キャプテンコミックス自体が全部入手不可能になっている)。マンガがアニメ化されたことだって殆どない(『炎の転校生』がオリジナル・レーザーディスク・アニメになったくらいだが、レーザーディスクがまだ普及してないころで、これがもののみごとに売れなかった。製作したガイナックスは大馬鹿である)。一般に島本さんを知らない人がいるのもムリはない。
けれど、一般人は知らないかもしれないけれど、もしも誰か評論家が本気で「現代マンガ史」を編もうとしたら、島本さんは絶対に外せない人なんだぞ(と思うんだけどなあ)。パロディでコメディを描くマンガ家さんはそれまでにもたくさんいたが、“パロディでストーリーマンガを描く”なんてスタイルを発明していきなり確立しちゃったのは、島本さんが殆ど初めてなのである。“エポック・メーキング”な人なのだ、島本さんは。それなのにご本人自身が謙遜するように「知られてない」みたいなことを仰るなんて……嗚呼(TロT)。
だから逆に、この映画がきっかけになって、コミックスの復刊とか、そういうことがあったらなあと思うのである。もっと知られよ島本和彦。羽住英一郎監督、もしかしたら“それを狙って”『逆境ナイン』を映画化しようと企んだのではなかろうか。ともかく原作に惚れこんでいなければ、数ある島本マンガでもよりによってコレを「映画にしよう」なんて発想は、絶対にありえない。なんつーかね、野球マンガのフリしてこれ、ぜんっぜん野球マンガじゃないんだから。
梶原一騎的“やればできる”精神主義を、本質的にはただのヘタレな連中にあえて語らせて「ズレ」を生じさせてギャグに落とす。「逆境に燃える」のは分かるけど、実力が伴わなきゃ、普通は絶対勝てないもんだ。つまり、こういう「勘違いな連中」が、ストーリー展開としてはケチョンケチョンにやられて終わり、というのが「これまでのギャグマンガ」の笑いどころだったわけだ。
ところがこのマンガではそれをムリヤリ「勝利」に持って行くという、ありえないことをやらかしてるんだね(^o^)。登場キャラクターたちはみんなその「勝利」に感動してるんだけど、読んでる方はただひたすら「唖然」である。
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09月25日(土)
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