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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ムダじゃムダじゃ/『フラッシュ! 奇面組』2巻(新沢基栄)/『ぼくんち 全』(西原理恵子)/『ねらわれた学園』(眉村卓)
 描かれる人間関係も、ベタベタな「絆」などではない。かの子も二太も船の人々もみな嘘をついている。嘘をつかなければ人間関係など結べないことを熟知している人ばかりなのだ。「優しさ」も「笑い」も「涙」も、全て虚構であることを喝破するサイバラさんの視線が、どうして暖かかろうか。
 人の心を揺さぶるのが愛情だと信じている人にはサイバラさんのこの冷徹さも暖かく見えてしまうのかもしれないが、私はこの『ぼくんち』のラストシーンの二太の笑顔を見たとき、「サイバラさん、鬼だ」と思って戦慄が走るのを覚えたものだ。
 あんたね、人生には別れしかないってラストで「あえて笑え」って、そんなふうに躾られてるガキ見て、感動できますか? このマンガ、見方によっては第一級の「ホラー」だとも言えるのだ。 
 てなわけで実は私、この本では泣いてません。泣いたと思ってた人もいるでしょう。いや、泣ける人はそれはそれで幸せなひとだと思いますよ。たぶん。


 眉村卓『ねらわれた学園』(講談社/青い鳥文庫fシリーズ・651円)。
 ここしばらく児童書のコーナーを回ってなかったので気が付かなかったのだが、講談社が小学生向けにSF・ミステリーのジュブナイルを積極的に提供しようと新シリーズを続々と創刊し始めている。
 「fシリーズ」の「f」は、SFの「f」、未来(future)の「f」、ファンタジー(fantasy)の「f」、ふしぎ(fushigi)の「f」なんだそうな。先月から、楠木誠一郎『お局さまは名探偵!』、小松左京『空中都市008』を皮切りに、毎月、2、3冊を上梓して行く予定で、今月はこの『ねらわれた学園』が目玉となる。
 本作はもちろん、これまでにも何度も版を重ねてきたし、映像化も何度となくされてきた(我々の世代には何と言ってもNHK少年ドラマシリーズの『未来からの挑戦』や、薬師丸ひろ子主演の映画&原田知世主演のドラマ化が印象に深い)ジュブナイルの傑作である。

 阿倍野第六中学校は、勉学一本槍の校風に反発する生徒が年々増えていく傾向にあった。新しく生徒会長となった美少女、高見沢みちるは、その魅力的な微笑と不思議な力で「校内パトロール」を結成、少しずつ、そういった「反動分子」を「粛清」していく。彼女の正体は、その真の狙いは何なのか? 校内が日に日にただならない雰囲気に包まれて行くのを感じた関耕児と楠本和美の二人は、高見沢みちるの通う「栄光塾」にその秘密が隠されていることを知る……。

 私が最初にこの小説を読んだのは、主人公の耕児、和美たちと同じ中学2年のことだと思う。
 これにどれくらい影響を受けたかというと、中学校の生徒会で「最近、校内の風紀が乱れているように思います。生徒で校内パトロールを実施したらどうでしょうか」と提案し、見事に却下されたことがあるくらいだ(^o^)。
 もちろんこれは、却下されることが目的だったのである。いやね、心情的には当然、耕児たちに共感を覚えてたんだけど、私本人は別に熱血漢でも正義漢でもなかったから、あえて逆の立場を取ってみて、当然みんなもこの本を読んでいるんじゃないかと思って「遊んで」みたのよ。まかり間違って、提案が通ることにでもなったらそのときはかえって困ることになってたんじゃない? という疑問を抱く方もおありだろうが、その心配はいらなかったのだ。
 会議の席である女の子が「それ、『ねらわれた学園』でしょう?」と言って、本作の村田和美そのままに、パトロールの不当性を訴えた。私もあっさり自分の提案を取り下げた。
 もちろんその子にも私が提案したことの意味はよくわかっていた。校内の風紀の乱れは現実にあって、先生たちも何か厳しい方策を、と考えている雰囲気がそのころにはあった。かと言って過激な「取り締まり」に何か意味があるのか、私はそのことに疑問を抱いていたので、その問い掛けを生徒たちに投げかけるのが目的だった。つまり「そこまで厳しくしなくても、自分たちの意志で何とかできる」という雰囲気を校内に作りたかったのである。

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07月25日(金)
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